内容説明
パンデミックに閉塞する世の中で、生への希望だったバンドのライブ中止を知ったとき、二人は心中することを決めた。世界を拒絶した若い男女の旅を描く表題作を初め、臨界状態の魂が高アルコール飲料で暴発する「ストロングゼロ」など、あらゆる場所でいま追い詰められている人々の叫びが響き渡る。いずれも沸点越えの作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
265
金原 ひとみは、新作中心に読んでいる作家です。本書は、壊れた女たちの連作短編集、どの作品もタイトルどおり密で、ソーシャルディスタンス取れていません(笑)オススメは、表題作『アンソーシャルディスタンス』&『テクノブレイク』です。 https://book.asahi.com/article/14369706 【読メエロ部】2021/06/22
machi☺︎︎゛
145
金原ひとみさんは合わないと思っていたけどこの本はすごく面白かった。ストロングゼロ、デバッガー、コンスキエンティア、アンソーシャルディスタンス、テクノブレイクの5編からなる短編集で、どれもなかなかイタイ女の子が主人公。自己肯定感が低く、何かに依存する事で何とか均衡を保っている。私も若い頃はそんな事あったなーと思いながら、主人公達に過去の自分を投影しながら読んだ。でも年をとったらどうでもよくなった。そんな意味では年をとるのも悪い事ばかりではない。2021/12/27
モルク
142
5話からなる短編集。主人公の女性たちはいずれも酒、恋愛、美容整形、セックスに依存し、次第に深みにはまっていく。もがけばもがくほど(本人たちはさほどもがいているようには見えないが)蟻地獄のように際限がない。誰か、彼女たちの孤独に気づいて止めてあげて!苦しかった。でも1話目の「ストロングゼロ」酒に依存するユキさん、いくら容器を移しかえても会社の中、仕事の合間はまずいでしょ。マスクをしていても、絶対臭いや口調でばれるって!本に向かって注意してしまう私がいた。2021/11/28
ゆいまある
141
コロナ禍になってすぐ、仕事で世話になってる人から「セックスしよう」て連絡来た。会うな、接触するなと言われる中のセックスは背徳感満載で良さそうだなと思ったのは私だけじゃ無い筈だ。依存を扱った6つの短編、後半2編がコロナ禍を書いたもの。閉塞感、絶望、人がバランスを崩していく過程がリアル。ディテールの書き込みが凄まじくて、金原さん、才能だけじゃなくてただならぬ努力の人だと思わされる。次作も楽しみ。コロナ初期だからか、死の恐怖が色濃くて、ああそうだったと思いながらも暗い気持ちになる。2022/01/30
ちゃちゃ
116
自分という存在の脆弱性。この世に生きる価値がある存在だと確信が持てない生きづらさ。それが依存へと結びついてゆく。5編の短編中の2編がコロナ禍を取りあげたものだが、他者と繋がりにくい状況下にあって、その脆弱性はさらに顕在化する。他人との距離をうまく取れずに孤立し、今生きているという実感が得られずに自己否定に向かうしかない苦しさ。アルコール依存だとかセックス依存だとか、「自分の力では制御できない獰猛な欲望」に従い弱い自分のまま生きるしかない。金原ひとみの筆は鋭く痛切で安直な希望は描かないが、真摯で嘘がない。2022/05/18