内容説明
1995年、大地が裂けた。時代が震えた。
阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件と未曾有の災厄が相次いだ一年、戦後五十年かけてこの国が築き上げたあらゆる秩序が崩れ去っていく……。
昭和史の闇を抉った傑作『地の底のヤマ』の著者が描き出す平成の奈落。
雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編。
年明け早々に阪神地方を襲った大地震に衝撃を受け、被災地に駆けつけたヴィジュアル月刊誌「Sight」記者の古毛は、その凄まじい惨状に言葉を失う。神戸でも火災被害の激しかった長田地区では焼け跡に佇む若い女と遭遇。夕方の光を背にこちらを振り向いたときの眼はかつて戦場で出会った少年兵とそっくりだった。果たして彼女は何者なのか?
「何やってんだろうな、俺達」加納が自嘲ぎみに呟いた。(略)「世間の耳目を引く話題に引っ張り回されて、取材取材に駆け回る。それで終わってみりゃぁ、前に何やってたかも記憶が薄れてる始末だ。(略)世間、てぇお釈迦様の掌で踊らされてる、孫悟空かよ」
「元々、報道なんてそんなものだったのかも知れませんけども」古毛は言った。「特におかしくなって来たのが、あのバブルの辺りからだったような気はします」
「あれで、日本が溜め込んで来たあれこれの矛盾が一気に噴き出して来た感じだな。戦後、営々と築いて来たこの国の神話が次々と崩壊してる、ってところかな」
――本文より
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
86
本作は1995年に起こった事を纏めた、ノンフィクションノベルのような印象を受けた。この1年を語るのは、ヴィジュアル月刊誌「Sight」記者の古毛冴樹。この年に起こった大きな出来事は、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件。そして11月にはウィンドウズ95が発売になっている。そんな出来事の凄まじい惨状はとても真に迫るものがあった。自分の記憶にも鮮明に残っているそれらの事件。もう25年以上が経っているのかと思うと、隔世の感があった。それらの出来事にミステリーが添えられているが、現実には勝てない。面白い一冊だった。2021/03/20
Ayako
35
雑誌記者の目線から、1995年の出来事を追体験できる小説。この年は、阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、警察庁長官狙撃事件等が起きた年。こんなに災厄が続いた落ち着かない年だったのかと改めて感じた。小説というより、ノンフィクション物を読んでいる気分になった。2021/04/13
rosetta
30
★★★★✩内容も面白いし文章も読み辛くはないのだが、読点の独特の使い方が絶望的。読点は文章のリズムを作るのにそこら中でぶった斬られると読んでいてイライラする。ブレスと位置だとして捉えて声に出して読んでみれば簡単に分かるはずのことなのに。それに意味までおかしくなる使い方も屡々。一例だけP254「(若い頃)なら今、以上の(美しさだったろう)」等は狂気すら感じる。阪神・淡路大震災と地下鉄サリンに象徴される怒涛の1995年。この2つの事件を通奏低音にして幾多の事件に追われるフリーライタがリアルに描かれる2021/07/19
detu
24
新聞紹介より。阪神大震災のさなか起きた殺人事件を軸に(何処かで観たよなシチュエーション)オーム真理教、官々接待、スーパーナンペイ事件、沖縄少女暴行事件などを通して報道月刊誌のあり方を考えたのか。時代を語る設定なのか殺人事件についてはグダグダ感も。1995年は兎に角事件の目白押し。古き体質は淘汰され、ウィンドウズ95発売は今に続くIT元年となったと。数々のエピソードは昭和親父には忘れていたことも含め興味深かった。そんな時代だった。2021/04/18
シンクー
10
図書館の新着コーナーで唯一残ってた本。履歴思い出していたら、この作家の作品自分には合わないってコメントしている。今回はどうか? 期待を裏切らない駄作だった。とにかくエッセンスが多く(詰め込む)ダラダラ長い。平成7年の時事ネタのドキュメンタリーを金に変えるため文芸誌に仕立てあげただけ。編集者もどうかと思う ← 以前にもそうコメントしてるわ 2021/09/21