内容説明
「この世から逃げたくて仕方がない。それと同じくらい、この世に触れたくて仕方がない」(本文より)駆け落ち、逃亡、雲隠れ。行き詰まった人々が、ひととき住み着く「家」を巡る連作短編集。○家族を捨てて逃げてきた不倫カップル――「はねつき」○逃亡中のヒットマンと、事情を知らない元同級生――「ゆすらうめ」○新興宗教の元教祖だった老齢の婦人――「ひかり」○親の決めた結婚から逃げてきた女とその妹――「ままごと」○子育てに戸惑い、仕事を言い訳に家から逃げた男――「かざあな」
目次
はねつき
ゆすらうめ
ひかり
ままごと
かざあな
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
302
彩瀬 まるは、新作中心に読んでいる作家です。行き詰まった人々が、ひととき住み着く場末の「家」を巡る連作短編集、独特の世界観でした。オススメは、純文学的な『はねつき』&サラリーマンの悲哀が感じられる『かざあな』です。2020/02/14
しんたろー
240
古い借家で生活した人たちの5つの連作短編…町田そのこさんの新作が似た設定だったので「彩瀬さんは、どう描くのだろう?」と興味津々だった…不倫して駆け落ちした年齢差カップル、新興宗教で教祖だった老婦人、親の決めた結婚を拒絶する姉妹、乳飲み子と育児ノイローゼ気味の嫁を避けている単身赴任男…何かから逃げている人の気持ちがジンワリと伝わってくる。ちょっとした怪現象を彩りにして、悩める人の深層心理を丁寧に描いた著者らしいタッチで、共感しながら読めた。各話の繋がりが洒落ていて、「屋根裏の箱」の想いも考えさせられた。 2020/03/27
おしゃべりメガネ
191
切なくも救われるキモチになれるステキな連作集でした。とある古い一軒家に越してくる様々な人達。駆け落ちした二人、犯罪者と同級生、宗教団体の元教祖、マリッジブルーの姉と彼に付きまとわれる妹、子育てと仕事に悩み逃げてきたサラリーマン、それぞれが時を越えてゆっくりとつながる展開はさすが彩瀬さんでした。千早さんと作風が正直ごちゃごちゃになるトキがあるのですが、どちらもやっぱり新作は手にとってしまうステキな作家さんなので、作品も期待を裏切りません。個人的には犯罪者と同級生の話と、マリッジブルーの姉の話が良かったです。2020/02/16
fwhd8325
162
どうにも湿った嫌な空気が漂っているようだ。梅雨時だからではなく、原因はこの短編集だ。彩瀬さんも時々不思議な物語を語るけれど、この短編集はわかりやすいだけに厄介だそれにしても、さいはての家とはいいタイトルだと思う。希望を見いだしてもどうにも叶えられないような場所のように思えます。どこか時間軸がずれてしまったように、取り残された場所。今度はそんな人が引っ越してくるのだろうか。年をとった私は隣の老人ホームで楽しみにしているんです。2020/07/07
モルク
160
老人ホームの隣の、小さな庭のある古い借家。そこは訳ありの人がたどり着く家。駆け落ちの男女、逃亡中のチンピラ男たち、死体遺棄事件を起こしていた元宗教団体教祖、実家ともめている姉妹、妻子の元から離れたい男という世の中に行き詰まった人たちを描く5つの連作短編集。彼らはそれぞれこの古い借家でつかの間の休息を得る。だがそこは最後の逃げ場ではなく、彼らはまた移っていく。「ちゃんと逃げて、生き延びた自分を褒めてあげなよ」という大家さんの言葉がしみる。「はねつき」「ままごと」が好き。2020/11/23