内容説明
三大陸の三人の女性。かけ離れた境遇に生きる彼女たちに唯一共通するのは、自分の意志を貫く勇気。三人が理不尽な運命と闘うことを選んだとき、美しい髪をたどって、つながるはずのない物語が交差する。共感と感動を集め、フランスで85万部を突破した話題作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
250
キム・ジヨンより私こっちが面白かった。フランスの映画監督による小説。カナダのユダヤ系シングルワーママ弁護士が癌に倒れ、前向きに生きていくためにシチリアから取り寄せられたカツラを買う。その髪はインドで素手で糞便処理を強いられていた不可触民のもの。シチリアで材料難に陥ったカツラ職人は、シーク教徒の移民彼氏にインドから髪の輸入を提案される。それぞれ悲惨な状況と向き合う人々が感傷的ではない筆で描かれて美しい絵になる。インド映画好きだけど余りに過酷な不可触民や女性のこと知らな過ぎたと反省。インド親子幸せになって欲し2020/04/09
R
224
女性の自立を描いた、応援した小説と書くと陳腐にすぎる、事象としてはその通りだけども、もっと深く、世界の成り立ちに強く立ち向かう姿を描き、読む人に勇気と希望を与える作品でした。3種類の女性が、まるで違う立場だけども、それぞれ女性だからという苦難にあっている、でも、そこに屈せず自分を生きていく、その結果が、それぞれに勇気を与えることになる。3人は出会うことも、知り合うことも決してないのに、それぞれがお互いを励ましあった、美しくすがすがしい物語を味わえました。2019/09/05
ネギっ子gen
221
【収穫本】実に良かった。内容がベスト(とは言え、苛酷な現実を突きつけられ、たじろぎながらの読書ではあったが……)で、構成が絶妙。何より表紙が内容にマッチしている。3人のヒロインの話が三つ編みのように交差して語られていくのだが、結末で、このように話を収斂させるのか、と感嘆させられました。巧いなぁと。最後のエピローグ。<私はたんなるつなぎ、ささやかな架け橋でしかない。女たちの交わるところで、それを結びつける細い糸。世界からも人の目からも見えない、髪の毛ほどに細い糸>は、また著者自身の祈りにも似た思いなのか。⇒2020/04/16
Kazuko Ohta
200
便所の汲み取りに生まれついた女性(インド)と、自らも籍を置く父親の会社が危機に瀕している女性(イタリア)と、癌に侵されていることを知った弁護士の女性(カナダ)。いったい誰がいちばん不幸だろうかと考えてしまいました。最も驚いたのは最初の女性スミタ。そこには尊厳など微塵もありません。彼女が受ける仕打ちは想像を絶している。人間以下の出自を彼女自身は受け入れても、自分の娘には読み書きを習わせたい。『82年生まれ、キム・ジヨン』の先行き暗いエンディングと比べて希望があります。「生まれはよくなくとも、勇気はもてる」。2020/10/06
なゆ
196
終盤にむけて、3人の人生がゆるやかに編まれるようで、とてもとても良かった!地球上のバラバラの場所で、困難に立ち向かう3人の女性たち。インドの不可触民(ダリット・最下層民)のスミタは娘にだけは自分と同じ仕事をさせたくない、と命がけの計画をたてる。イタリアのジュリアは家族と工場の命運に押しつぶされそうになりながら、恋をする。カナダのシングルマザー敏腕弁護士サラは、いろいろ犠牲にしながらようやくここまで…というところで病に倒れてしまう。3人それぞれの闘いが、しなやかな希望で繋がっていく物語だった。2020/02/03