海外文学セレクション<br> パールとスターシャ

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海外文学セレクション
パールとスターシャ

  • ISBN:9784488016654

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内容説明

1944年、ユダヤ人の12歳の双子、パールとスターシャはアウシュヴィッツ絶滅収容所に家族とともに送られ、優生学研究に取り憑かれた〈死の天使〉、ナチス・ドイツの医師ヨーゼフ・メンゲレが集めた多くの双子たちとともに《動物園》と呼ばれる施設に入れられる。子供たちに自らを〈おじさん先生〉と呼ばせ、おぞましい人体実験を繰り返すメンゲレ医師の研究対象となった二人が、少女の純粋な目で見た恐るべき世界を叙情的な、それでいて力強い筆致で描いた物語。生命の尊さ、人間の言葉の力を描いた、そして人間の本質について深く考えさせられる一冊。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

キムチ27

61
ナチス統治期、アウシュビッツ収容所に送られた双子、パールとスターシャが見た世界。そしてメンデレと言えば。作品はパールとスターシャが語る想いの二部構成。幼い頃は言葉が無くても二人は繋がっていたが、その後生きてまみえられなかったものの、パールの必死な想いはスターシャへと繋がって行く。双子のお父さんらにもモデルがいる事、解放後の偉業もを巻末で知る。幼き頃 物事の理を教えた生物学者の祖父~生き物の多様性。 言葉が紡ぐ永遠、引き継がれて行く心の素晴らしさが背景となっているこの世の地獄絵図と被さる。”駅の壁は名前で2021/10/31

ヘラジカ

45
精神状態によっては鬱になりそうなほど悲痛な物語。小説というよりは詩のように繊細な言葉の数々によって、切なさと痛々しさはいや増しに増している。しかし憎悪を原動に生き続けるという絶望と、地獄のような日々の末にだからこそ、最後の些細な奇跡が受け入れられ輝くのだろう。重く辛い読書だったが読了後は大きな感動を得た。感想を書くのも難しい作品だけれど読めて良かった。邦題は創元にしてはそこまで酷くない。でも作中の「混血児」にルビでミシュリングと振っているのが無意味になっているのではないか。2018/10/07

星落秋風五丈原

38
双子が現在と過去と未来のどちらを取るか、という話をするところがあるのですがお互いが未来を譲り合うシーンがもうたまりません。マッド・サイエンティストがSFの中だけにいると思ったら大間違い。本作では、ずっと相手の事を想いながら生きる側と、ずっと自分の欲望を満たすことだけ考えながら生きる側との対比が描かれる。前者が双子、後者がメンゲレ。最初に書いた通り、史実は-運命は―メンゲレを復讐の刃から守った。ならば双子は負けたのか。さあ、そう決めつけてはどうだろう。彼女の最後の台詞を読んで、読者それぞれが考えて欲しい。 2018/10/28

キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん

37
アウシュビッツに拉致され、双子だった為に医師メンゲレの殺人拷問病棟に送られたユダヤ人のパールとスターシャ姉妹の話。メンゲレが子供達に行った恐ろしい拷問。実験などと言ったら、本当に実験をしている人々に失礼過ぎるくらい、いい加減で残酷な遊び。フィクションでありながら、実在した人達をモデルにしている。恐ろしい環境で姉妹とその周りの子供達はどのようにして現実と渡り合ったか、闘う事はできなくても自分の想像を拡げて生き延びようとしたか。フィクションでありながら、子供達の静かな闘いがよくわかる。酷い作品である。2018/12/21

take0

33
アウシュヴィッツ収容所の<動物園>と呼ばれたその場所で、パールとスターシャの双子の姉妹は一つであることを切り裂かれてしまう。二人の、ミリ医師の、<双子たちのお父さん>の、ペーターの、痛み、哀しみ、嘆き、怒り、そして労りと慈しみと愛情が詩的な文章で語られ、深く鋭く心に響いてくる。フィクションではあるが作者がこの作品を書く切っ掛けを与えた多くの事実、モデルとなった実在の人物達、届けられた声、途切れてしまった声、届くことのなかった声なき声を、忘れずに記憶に谺させて欲しいとの願いが伝わってくるような作品だった。2019/03/11

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