内容説明
19世紀半ば、英国。北極海を目指し捕鯨船ヴォランティア号が出港した。乗組員は、アヘン中毒の船医サムナー、かつて航海で大勢の船員を犠牲にした船長ブラウンリー、そして凶暴な銛打ちのドラックスら曲者揃い。やがて船内で猟奇殺人が起きるが、それは過酷な運命の序章に過ぎなかった――。想像を超える展開と圧倒的な筆力で、人間の本性と自然の脅威を描き尽くすサバイバル・サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のぶ
87
まあ、面白い冒険小説を読む事ができた。舞台は19世紀半ばの英国。北極海を目指す捕鯨船ヴォランティア号。登場人物も阿片中毒の船医サムナーをはじめ、個性的なメンバーばかり。読み進むうち、船内で少年の殺人事件が起こり、ミステリーの要素も盛り込まれた贅沢な造り。その後もいろいろな事件が起き、飽きさせることがない。全体を通し、血と暴力に加え捕鯨船特有の強烈な臭いを感じさせ、捕鯨船の厳しさをも味わうことができた。但し、終盤の盛り上がりに欠け、やや尻すぼみな印象は否めない感じを受けた。2018/10/26
どんぐり
80
19世紀半ば、北極海を目指す英国の捕鯨船ヴォランティア号の船内で起きた殺人に始まり、氷山と衝突した破船から脱出する乗組員の極寒地でのサバイバルゲーム。アザラシの肉で食いつないだり、白クマの腹を切り裂いて中に入り込んで生き延びたり、まるで映画「レヴェナント」でディカプリオが演じたような場面もあったりするけれど、面白さには少し欠ける。2019/08/10
キムチ27
59
人間の生っちろさなぞ、ぶっ飛ぶ凄まじい作品だった。装丁の古めかしさから古典?と思ったが 最近のブッカー賞選考レースに上がったとあり、驚く。舞台は19C中期。シェットランド諸島にある港から出港した捕鯨船。船医サムナーの目を通して物語が語られる。場面は冷たい冬の海・・かといって白ではない。どす黒さを持つ血と膿の赤色。漂う臭気は精液と体臭・・それもすえた腐敗のソレ。生きる為の極限が描かれ、欲望・暴虐が飛び散る。終盤、生きんとするサムナーが仕留めた熊の肉を屠りその体内で凍死を免れ現世に戻る下りは圧巻。2019/02/16
ヘラジカ
45
ブッカー賞候補(最終リストには残らなかったみたいだが)は伊達じゃないと感じる力作。どこか突き抜けて良いと感じるところはないが物語・表現力ともに優れている。それだけに帯のコピーがやや的外れで大げさなことが、作品自体の評価を変えてしまいそうなのは非常に残念だ。文庫本で多くの人が手に取りやすいのもあるし、内容を勘違いして読んだ人はガッカリするんじゃないか。映画の『レヴェナント』やコーマック・マッカーシーの作品が好きな人なら満足すると思う。迫力としてはどちらにも及んでいないけれど。良い小説なのは間違いない。2018/09/01
Nao Funasoko
43
表紙と帯の煽り文句でてっきりネイチャーアドベンチャー系かと思い手にとったがちょっと違ったかな。各場面場面で悪臭香しい小説。WW2018/09/15