内容説明
第二次世界大戦でイギリスを率い、ナチスを負かしたのは、一度失敗して引退した男だった。彼が持っていた武器は、ただ一つ。言葉をあやつる、たぐいまれな才能だった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
102
映画の原作となったノンフィクション。1940年5月のイギリス。ナチスドイツと戦い世界をヒトラーから救った名首相とされるチャーチル。だが、戦前の彼は独裁者ヒトラーに対する警告を続けても政権の中枢から遠ざけられ、ドイツとの戦争をなんとしても避けようとする宥和派からは「戦争屋」のレッテルを貼られた。英国は武力でナチスドイツと戦った。だが彼は国民をその言葉で鼓舞し率いた。彼のとった行動は全くブレていないが、時代と環境によってその評価は大きく変わる。戦時には戦時に相応しい指導者が必要ということだろうか。★★★★2018/04/24
Panzer Leader
50
山あり谷ありの政治家人生を送ってきてもう終わりと思われていたチャーチルが、ドイツの西方電撃戦開始の非常に困難な時期に首相に就任。ヒトラーとの和平交渉を望む声もある中、敢然とドイツとの戦いを決断した彼が議会や国民に語りかけた三大名演説を軸に1940年5月10日から6月4日までを描いた作品。この演説を読むと当事者でもないのに胸が熱くなるほど心が揺さぶられる。言葉を動員したとあるが実際のところ言葉しか武器はなかったとも言える。 2019/09/10
yamatoshiuruhashi
31
巻末解説に経緯は詳しいが、著者アンソニー・マクカーテンが映画の脚本を書くと同時に克明な資料の裏付けを以て書いた本でノベライズでもなく、また「原作本」という訳ではなく映画と補完しあう歴史記録と言えよう。大英帝国を強固な意志で守り通したというイメージが定着しているチャーチルだが、実のところはどうだったのか。そしてかれは議会政治というものに対して、あるいは世界を席巻する激突の時代に「言葉」でどのようにたちむかったのか。「民主主義」、「議会」、「ノブレス・オブリージュ」の意義を追求した見事な一作である。2018/06/21
えーた
21
1940年、ナチスがヨーロッパを蹂躙していく中、遂に同盟国フランスも陥落間近となり、いよいよ欧州平和の防波堤という役割がイギリス一国にのしかかろうとする中、新首相に選ばれたチャーチル。本書のテーマは「言葉の力」で、若き日に鍛え上げたレトリック技術を駆使し、一字一句周到に彫琢されたチャーチルの「演説」が、ヒトラーとの和平交渉という悪夢のような案に傾いていった議会の考えを一変させ、閣僚や国民の士気をいかに鼓舞していったかが描かれている。私が最近ハマッた映画「空軍大戦略」の前日譚としても読めて本当に面白かった。2018/11/19
たみき/FLUFFY
10
ノベライズではなく、閣議議事録や、手紙、関係者や当事者の日記を元に、1940年5月10日から6月4日までに何があったのかが書かれている。既に他の本で読んでいて知っていることも多く、確認するように読んだ。マクカーテンは、同タイトルの脚本も書いているので、映画本編の補完としても役立つ。ハリファックスのチャーチルへの感情が彼の日記に書かれていて、この2人は「国を守る」という気持ちは同じだが、水と油のように相性が合わなかったのがわかる。失敗続きのチャーチルに国を任せるのは確かに恐ろしいことだったと思う。2018/04/01