内容説明
舞台は、〈北の街〉にある蛸足型の古い総合大学。語り手の女子学生と同じ生命科学研究所に所属する幼馴染みの男子学生が、ある日、一心不乱に奇妙な実験を始めた。亡くなった心の師を追悼するためだ、と彼はいうのだが……。夏休みの閑散とした研究室で密かに行われた、世界を左右する実験の顛末とは? 少しだけ浮世離れした、しかしあくまでも日常的な空間――研究室を舞台に起こるSF事件。第1回創元SF短編賞を受賞した表題作に始まる、理系女子ならではの大胆にして繊細なアイデアSF連作全6編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BlueBerry
38
設定が変わっていて新鮮でした。割と馴染みが少ない理系のお話なので、ついていけるか不安な部分もありましたが全く問題ありませんでした。嵌ると壺だと思うけれど、やはりちょっとマニア向けなのかな。2013/11/28
ソラ
37
SF短編集。読みやすい雰囲気だったけど、結末としては結構怖いものもあったり。表題作とか実際に起こったらもうおしまいでしょ。2014/09/07
もち
35
「だれにみせるわけでもなく首を振った。だって贖罪だから。」◆細胞の大部分を占める、明らかに不要な遺伝子群。その存在意義を証明すべく、共同研究が始まった。あいつは言う。微生物に不可能はない。裏切りもない。だが――(『不可能もなく裏切りもなく』)■トリッキーな思考実験を、物語に昇華させた連作アイデアSF。何気なくも極端な仮定から飛び出すとんでもない帰結。いずれ世界を終わらせる淡い群像劇。着想と空想、寂寥と清爽から成る二つとない作風に、目から鱗が零れ落ちた。2016/03/20
ミーホ
32
ジャケ買いした「就職相談員蛇足軒~」が思いのほか面白かったので松崎有里さん2冊目。今回も舞台は私のお気に入りの街《仙台》を模した、某大学でのてんやわんやな短編集。蛇足軒より更にアカデミックに、研究員の日常が事細かに描かれているが、どこかファンタジックでもあるところが魅力。理系に憧れる文系脳の私にはこういうのたまらんのです。中でも実験に特化した研究員達の救世主、論文を代筆してくれる代書屋の話が好き!!まだ文庫化してない「代書屋ミクラ」が早く読みたい!!けど、もったいぶる。北の街の地図が最後にでてきて(笑)2015/11/21
miroku
29
進化のあがり・・・か。終末テーマは数多いけれど、着想が斬新。全体が北の街の大学研究室で起こるファンタジックな出来事で構成された短編集と言うのも斬新。2015/11/25