内容説明
なぜ警察に追われるジャン・ヴァルジャンは、パリのその街区に身を隠したのか? 里親から虐待を受けるコゼットが、夜店でひとり見つめていた人形はどこでつくられたものなのか? 19世紀の美麗な木版画230葉を106のシーンに分け、骨太なストーリーラインと、微に入り細を穿った鹿島茂先生の名解説で、物語があざやかに甦える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さゆ
110
レミゼとユゴーの思想についての解説本。罪なる者を許す良心が獣と人間を隔てる人間性、則ち神であり、これより人類は進歩の道をたどる、とあるようにやはり許しがテーマの1つにあるようだ。かつてマンデラやガンディーも許すことによって解決をはかったが、憎しみや復讐だけに囚われているとそれを果たしたとしても残るのは目標を失った空虚だけで、負の感情が大きいほど空虚さもまた大きくなる(体験談)。嫌なことを覆い尽くすほど好きなことしたいと思う今日この頃。2023/12/10
まこみん
87
今年の帝劇で観る前に、きちんと原作の知識が欲しいと思っていたところ、ぴったりな文庫本に出合った。当時の木版画挿絵が230枚掲載されて、その時代背景やユゴー自身の思想の変遷も分かりやすく書かれ、すっかりレミゼ通になった気分に。フランス革命からの目まぐるしい時代変遷も再認識出来た。ジャン・ヴァルジャンの生涯を通しての罪の意識と追われる立場、ミリエル司教から受けた慈愛の精神。ジャベールの自身崩壊の経緯。当時のパリの庶民生活、弱者への不寛容。1832年6月の民衆蜂起の場面ではバリケードの解説。民衆の歌、熱い思い。2019/01/02
zero1
75
革命に愛、人間の狡さと死。すべてがここにある!誰もが知っているが、仏文学者を含めて読んだ人は意外に少ない。ミュージカルだけの人は作品の魅力を一部しか知らない。たとえばエポニーヌはガブローシュの姉。つまりテナルディエ夫妻の息子。パンを盗み脱獄を繰り返したことで19年牢獄にいたバルジャンは司教と出会い生まれ変わる。本書は多くの挿絵でこの壮大なドラマを紹介しながら解説。我々は犯罪者を排除するだけでいいのか。1862年に出たものの、底辺にあるテーマは今も問われ続けている。著者は古本でも知られる明大教授の鹿島茂。2019/02/10
i-miya
65
2013.12.07(12/07)(つづき)鹿島茂著。 12/06 (p042) 第6景、ジャン・ヴァルジャンの過去。 報復刑罰主義。 第11景、学生と女工。 パリの女工、ファンチーヌのエピソード。 1815.06、ワーテルローの敗戦、ナポレオンの百日天下、終了。 ルイ18世の第二次王政復古、始まる。 軍歴の代わりに、学歴が重んじられる時代。 学生の町、カルチエ・ラタンは学生があふれる。 グリゼットと呼ばれる女工たちと遊ぶ。 フェリックス・トロミエスもそんな学生の一人。 2013/12/07
広末涼子は、もう私の妻になるしかないと思う寺
62
中学時代、みなもと太郎の漫画でレ・ミゼラブルを読んだ。いかにも西洋という感じの素敵な話だと思う。外国の名作では唯一好きな物語だ。その程度の知識の私にも鹿島茂のこの本はわかりやすく面白い。図版もさる事ながら原作のダイジェストも見事。ユゴーの限界やフランス、パリの解説も興味深い。みなもと太郎の漫画では端折られていた登場人物も魅力的。何よりも名著の誉れ高いこの本を新装版で読めた事が有り難い。2013/01/31