内容説明
人間の理性が回復されるさまを、目前で観察出来るという機会は、滅多にあるものではない。この映画に登場する十二人の陪審員たち、珍しく婦人陪審員が加わっていない評決であるが、これらの陪審員たちの幾人かが、その性格によって、あるいは先入観によって歪められた理性を露呈し、その理性が、評決の最終段階にいたって、本来の人間性へと回復する瞬間、この「十二人の怒れる男」という映画は、その役割を果たしながら、滅多にない機会をあたえてくれるのである。(本文「十二人の怒れる男」をいかに鑑賞すべきか より)
目次
第1章 サスペンス&シリアス(キャロル・リードの傑作「第三の男」;「飾窓の女」について ほか)
第2章 ミュージカル&コメディと短評(本年随一のミュージカル『足ながおじさん』;エルンスト・ルビッチに似てきたワイルダーと「七年目の浮気」 ほか)
第3章 未公開作も紹介しよう(ニューヨーク封切映画特別紹介「マカンバー事件」;「ラジオ宣伝屋」 ほか)
第4章 映画を小説ふうに紹介してみると(キャロル・リードの新作「文化果つるところ」;ヴィヴィアン・リー三年越しの主演映画「愛情は深い海の如く」)
第5章 特別対談 双葉十三郎×植草甚一(春の話題作を語る)