内容説明
十年におよぶ海外左遷に耐え、本社へ復帰をはたしたものの、恩地への報復の手がゆるむことはなかった。逆境の日々のなか、ついに「その日」はおとずれる。航空史上最大のジャンボ機墜落事故、犠牲者は520名――。凄絶な遺体の検視、事故原因の究明、非情な補償交渉。救援隊として現地に赴き、遺族係を命ぜられた恩地は、想像を絶する悲劇に直面し、苦悩する。慟哭を刻む第三巻!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
151
御巣鷹山篇。航空史にて最大最悪の事故が起きる。事故原因は現在でも諸説ある。だが人災であることは間違いがなかろう。かつて恩地が組合時代に求めた、安全確保の体制作り。恩地は報復人事を受け、国民航空は利益追求の為に安全確保は後回しにされた。慢心が生んだ大事故はあまりに悲惨だった。保身を考える経営層は、遺族への不誠実な補償交渉を行わせる。かつての盟友だった行天は余りに不誠実な人物となってしまった。事故で亡くなった方の無念。遺族の悲しみ。当事者達の苦しみは言葉に出来ない。現在はモデル会社の意識は変わっだたろうか。2021/01/12
キムチ
86
この巻は小説というカテゴリーを突き抜けてノンフィクションの感覚で読んだ。余りの詳細さ、専門性で飛ばした個所も。御巣鷹山に関しての記述でこれを上回るモノがあるのだろうかと個人的に感じてしまうほどの筆力。筆者は現場を踏み、関係者の重い口を開くたゆまざる努力をかなりしたのではないだろうか。フィクションとすれば、堂本・行天・八馬の人間性をここまで忌むモノとして描いた事にも凄さを感じる。モデルは・・なんて野暮な事を考えたくないほどだ。外地見せしめ左遷の帰国後のこの事態。それでも2人の子供の優秀な事!2014/03/04
ぴー
85
第3巻は御巣鷹山篇だということを頭に置きつつ、初読み。想像を超える内容だった。エネルギー消費が半端ない。 特に印象に残ったのは、遺族の『残念です』の一言と、犠牲になった方の遺書。とりあえず何とか読み切った。 第3巻には圧倒されたが、『沈まぬ太陽』が名作だと改めて実感できました。2025/03/24
射手座の天使あきちゃん
77
日本航空社内の不条理・傲慢・人間の欲望等を赤裸々に 真相は?、久しぶりに坂本九さんを思い出しました(涙)
mukimi
76
520人の命を奪った航空機事故の全貌が精緻に描かれる。凄惨な事故内容、遺族の深い悲しみと怒りが重く苦しく、読み進めるのが辛い。DNA鑑定のない時代に家族の部分遺体を求めて何度も遺体安置所を訪れ皮膚や歯形や毛髪で大切な家族を見つけようとする遺族の痛ましさに胸が疼く。これまで企業人事の不条理さとそれに伏するしかない勤め人の描写から昭和の日本に憤懣やる方なかったが今回、被害者の遺書や遺族、企業の一部の人々の誠意ある振る舞いに、日本人の矜持、忍耐、節度を感じ胸が熱くなった。人殺し企業に転落した日航の今後はいかに。2025/06/27