内容説明
ドナルド・キーンをして本物の天才と言わしめた安部公房から、文壇の常識はずし町田康まで、日本語文学はどのように新しい「世界」を創っていくのか。言葉と文化・人間をまっすぐに見つめた文章三八篇。
目次
世界の中の日本文学―越境、それとも境界の変更?
「小説の方法」に導かれて―われらの大江から世界のオーエへ
辺境という罠―安部公房は本当に「無国籍作家」か
砂漠と辺境の詩学―『砂漠の思想』安部公房著
ロシアより愛をこめて―島田雅彦と「手法としての亡命」
言葉の渦に呑まれて―『かがやく水の時代』津島佑子著
したたかな言語感覚―『夫婦茶碗』町田康著
進化するコトバ
プーシキン対マクドナルドの苛烈な戦い
アヴァンギャルド芸術について〔ほか〕
著者等紹介
沼野充義[ヌマノミツヨシ]
1954年、東京に生まれる。東京大学教養学部卒業。同大大学院博士課程満期退学。ハーヴァード大学博士課程単位取得。現在、東京大学助教授
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感想・レビュー
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踊る猫
4
何故沼野充義氏の仕事をもっと早く知らなかったのか。私の不勉強と言われればそれまでなのだけれど、それが口惜しくてならない。恐らく「ロシア東欧文学」という馴染みのなさそうな領域の研究者の書いているものだから、敬して遠ざけることになってしまったのだろう。読んだからといって私の中のなにかが大幅に変わったというわけでもない、悪く言えば雑文集ではあるのだけれど外国語を学ぶことや翻訳することの困難さ、日本文学を世界文学の流れで捉え直すことが示唆されており大変に読みやすい。これはもっとエッセイや翻訳書を読んで行くべきだな2016/03/15
takao
3
ふむ2024/03/24
あやぴ
3
なかなか面白いではないか!先の多和田葉子さん本で取り上げていたので翻訳者の気持ち続きで読んでみた。大半は安部公房、大江健三郎、といったところの沼野先生論なので難しいところもあるが村上春樹のNHKラジオ講座も担当してた先生なので、柔軟性がある読みやすい文章。◎理想の書評なんてーのところで村上春樹風に言えばとか勝手に表現してるところが楽しい。◎翻訳には誤訳は付き物で、翻訳は必要悪である、しかし悪には悪の楽しみというものがある、時に善以上に。ここは惚れたね!◎帰れ!北方領土の解釈。納得なるなる!2015/09/19