内容説明
3,000万人が飲む井戸水から、毒物の砒素が見つかった。5万人を超える砒素中毒患者も出ている。豊富な水に恵まれながら、安全な飲み水がないバングラデシュ。なぜ、デルタ地帯の地下水に砒素が入るのか?どうすれば安全な水を供給できるのか?維持管理体制をどのように築けばいいのか?それ以前に、砒素が何かを知らない人々に、砒素の危険を伝えることができるのだろうか…。立ちはだかる“地下の不思議”と“地上の困難”。“いのちの水”を求め、日本のNGOとJICAの連携プロジェクトが始動した。
目次
序章 プロジェクトを探す旅
第1章 ODAとNGOの連携
第2章 深層地下水に目をむける
第3章 国際協力の渦の中で
第4章 代替水源技術への挑戦
第5章 持続的制度への挑戦
第6章 独自の道を拓く
終章 第2ステージの序幕
著者等紹介
川原一之[カワハラカズユキ]
宮崎市のNGOアジア砒素ネットワーク理事。1971年、朝日新聞宮崎支局の記者のとき、高千穂町の旧土呂久鉱山周辺で起きた砒素公害事件を取材。新聞社を辞めて砒素中毒患者を支援する一方、記録作家として土呂久の歴史を著述した。土呂久訴訟の最高裁和解後、94年にアジア砒素ネットワークを結成、アジアの砒素汚染地の調査・対策へ。00年から2年間、JICAの砒素汚染対策アドバイザーとしてバングラデシュ政府に派遣され、03年から現在まで3つのJICAプロジェクトの総括をつとめた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
29
バングラデシュは砂と水の国(15頁)。砒素問題は、NGOを通じてJBICが来ていた時に話を聞いたことがあった。たぶん10年以上前の話だが。砒素中毒の症状は恐ろしい:ボーエン病(皮膚がんの一種)、皮膚がん、肝臓がん、掌や足の裏に角化が現れた(30頁)。痛々しい写真が出る。ヒマラヤ山脈の歴史:4500万年前、インド亜大陸とユーラシア大陸が衝突、テチス海が隆起してできた。ヒマラヤの岩石に砒素が多く、今に至っているようだ(36頁枠組)。2015/09/08
Sanchai
3
サブタイトルを読んで「あれ?」と思ったが、読み進めていくうちに合点がいった。地下水の砒素汚染の問題は、90年代後半以降よくバングラデシュで聞かれたものだが、ことが重大かつ複雑すぎて何をどうしていったらいいのかわからなかった。それがまかりなりにも代替水源のメニューを揃えて、しかも住民参加ではなく住民と行政、議会の協働というところに可能性を見出すところまでたどり着いた。無色透明な汚染水を飲むなと言っても守られないが、おいしい水というのには住民の理解が得られた様子が窺える。2015/05/30




