内容説明
『河童の火の玉小僧で御座んす。気持ちの優しい暴れん坊で御座んす。お控えなすって、お控えなすって、下さいまし。手前、生国は九州で御座んす。九州、九州と申しても、いささか広う御座んす。大分は遙か、山麓の大滝で産湯を浴びて、泳ぎ、木登り、相撲道に精を出し、いまや敵なしの強者に御座んす。意地に強いが人情に脆い、ガキの頃から口八丁、手八丁で、生みの親にまで愛想を尽かされ、「大変な子が出来たわい、末恐ろしい」と、嘆かせた親不孝の河童小僧とはワシのことに御座んす。あれは小学校二年生の保健体育の時間だった。三尺八寸の狸顔をしたチビ教員が、「隣人を愛し両親を尊敬する人になれ」と言いやがった。そこでワシは正義は勝つこと、負けるは地獄と心に決めて、魚と猪捕りに命を掛けようと、誓ったので御座んす。以後、お見知りおきの程、宜しくお頼み申し上げまする』。表題作「河童小僧」と、悲しい恋の物語「天の川」を収録。
著者等紹介
アリノ真麿[アリノママ]
鹿児島生まれ。1959年明治大学卒業。職歴は代議士秘書、東京日産自動車、建設不動産業、著述業…
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