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出版社内容情報
なぜ量殺戮が起こるのか? 指導者への忖度、集団の暴走、そして虐殺へ……。豊富な取材経験を元に、森達也が虐殺のスイッチを探る。なぜ人は生きものを殺すのか? なぜ人は人を殺すのか? なぜ虐殺は起きるのか?
オウム真理教を撮った『A』や、佐村河内守に密着した『FAKE』など、絶えず問題作を仕掛ける映画監督・作家である著者が、これまでの取材体験を元に、生きものの殺生から個人の殺人、そして大量虐殺について考える。生きものや人の生死に関する著者の思索・議論の集大成がいまここに!
森達也[モリタツヤ]
著・文・その他
内容説明
指導者への忖度が始まった社会は危ない!なぜ人は人を殺すのか?大量殺人の仕組とは?オウム、アウシュビッツ、キリング・フィールド…。多くの虐殺現場を取材した著者の眼に見えてきたもの。それは加害者側の声の重要性だった。
目次
1 なぜ人はこれほど残虐になれるのか
2 どうしても学校や会社には適応できない
3 オウムと出会って僕は変わった
4 生きものの命は殺してもいいのか
5 人を殺してはいけない理由などない
6 もとからモンスターである人などいない
7 この世界は虐殺に満ちている
8 虐殺システムの核としての集団化と忖度
9 善良な人々が虐殺の歯車になるとき
10 虐殺のスイッチを探る
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
32
人はなぜ人を殺すのか。人はなぜ他の生き物の命を奪うのか――。根源的命題ゆえに、それらの問いの前に、人は途方に暮れるばかりだ。しかし、それを曖昧にしたままでは先に進めない、と映画監督たる著者は考えた。<集団は、ある意味で臨界状態にある。ちょっとした刺激で突沸や接種凍結を起こす。一気に相が変わる。そして、何が相転移を起こす物理的刺激になるか、事前には予測できない。イデオロギーや信仰の場合もあるが、もっと些細な物理的刺激の場合もある。これが虐殺のスイッチ/集団の論理は個とは違う。主語が集団になる>と。良書だ。⇒2021/03/11
ショコラテ
23
多分虐殺のスイッチは誰も知らないうちに、押した自覚もなくいつの間にか押されている。そう、以前から不思議に思っていた。アメリカ帰還兵のPTSD問題。日本ではあまり聞かないと思ってた。もちろん時代のせいもあるが、個が弱い日本人は壊れづらいらしい。集団に馴染みやすく歯車になりやすい。だから戦争で人を殺しても普通に日常生活に戻れる。考えたら怖いことだよね。虐殺はいじめの構図と同じ。多数vs少数で、集団から浮いている者を攻撃する。集団だと個の責任が薄まるから残虐になる。人間の本能だからブレーキかけるのは至難の業か。2019/01/20
遊々亭おさる
21
関東大震災時の朝鮮人狩りやナチスによるホロコースト・・書き出せばきりがなくなるほどに歴史に刻まれた蛮行の数々。彼らは何故、虐殺に手を染めたのか。オウム真理教を内側から見たドキュメンタリーを制作し、賛否を呼んだ著者が考察した虐殺に至る心理的なメカニズム。「凡庸なる悪」と評されたアイヒマンは役人として真面目に働き家族を大事に想う平凡な男だった。そう、貴方の隣にいるあの人や貴方自身のように。個を埋没させる社会的集団に属し、忖度と同調圧力に身を任せれば虐殺者予備軍の出来上り。彼らと我々を分け隔てるものは何もない。2018/12/29
今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン
20
著者の主張は一貫してるのでともすればどれを読んでも同じ金太郎飴感がある。ひとつの原理原則を訴えるのにそうそう修辞のバリエーションはつけれないということか。虐殺という行為自体は残虐であっても、それを行う人の心に残虐なものがないという、善意でなされたことは悪意のそれよりタチが悪いということにも例外なし。お化け屋敷がなぜ怖いのか、という例えにも著者がずっと言っている「正体がわからないものへの恐怖」が示されており、つまりはわかり合えれば恐れることなし、ということですね。2021/05/02
hk
20
75年にベトナムのサイゴンが陥落すると、隣国カンボジアの親米傀儡政権(カンボジアから北ベトナムへの支援ルートを遮断)は後ろ盾を失った。この機に乗じて、国王とポルポト派(クメールルージュ)は手を携えて政権を奪回。ここから原始共産制なるものへの回帰が始まった。キリングフィールドでは無垢な少年兵が虐殺の片棒をかつぎ、知識人(インテリ)は有無を言わさず一掃。女性は凌辱されたうえで殺害されるという有史以来何度も反復されてきた悲惨な光景がここにも出現した。 何故、人は虐殺を行うのだろうか? 本書はそれを考察している。2018/12/06