内容説明
恋をすると胸がドキドキしたり、眠れなくなったりします。我を忘れて傷つくこともあれば、相手にふさわしく自分を高めて綺麗になることも。―でもこれは、誰しもがいだく自然な感情ではないのです。そんな素敵な「恋愛」が生まれたのは、実は12世紀のフランスでした。当時の文学作品に描き出された恋人たちの姿を通して、現代日本の私たちまでつながる恋愛観をさぐり、華やかに咲き誇る文学の花園の散歩道へご案内します。
目次
第1部 新しい「恋愛」の開花(精神的恋愛は突然に―トゥルバドゥールの恋愛詩;恋愛の規則書―司祭アンドレの『宮廷風恋愛術』)
第2部 「恋愛」のつぼみ(恋愛誕生以前―『聖アレクシス伝』と『ロランの歌』;尊敬と恋愛―アベラールとエロイーズの「恋愛書簡」)
第3部 さまざまな「恋愛」の花(北フランスの宮廷文化の開花;結婚恋愛の成立に向けて―マリー・ド・フランスのレー(短詩)
情熱恋愛と理性的恋愛―二つのトリスタン物語
完全なる恋愛―クレチアン・ド・トロワ『ランスロあるいは荷車の騎士』)
著者等紹介
水野尚[ミズノヒサシ]
1955年生まれ。慶応義塾大学文学研究科博士課程単位認定退学。パリ第12大学(クレテイユ)文学博士(2002年)。神戸海星女子学院大学文学部講師、助教授を経て、2004年より同大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サアベドラ
15
中世フランス文学における恋愛観の変化。著者は仏文学者で、専門は(業績を見る限り)ネルヴァル。現代につながる恋愛観は12世紀南フランスの吟遊詩人によって発明されたものであるとして、そのことによって当時のテクストにおける恋愛描写がどのように変化したかを、『聖アレクシス伝』、『ロランの歌』、マリー・ド・フランスのレー、『トリスタン』、『ランスロ』などから明らかにする。論旨がはっきりしていてわかりやすいが、結局のところ作品の紹介になっていて掘り下げが少々甘い気がしないでもない。2018/02/09
吟遊
8
歴史学の本で、12世紀あたりのフランスで起こったトルバドゥールたちの詩と文化が現代に続く「恋愛」を生み出した、という昔から言われている説を踏襲し、教科書的にまとめたもの。せっかく仏文学の教授なのに、邦訳文献だけから、オリジナリティなしに、詳細な議論も抜きにまとめていて、そこが残念。2016/02/22
うえ
7
「宮廷という舞台を背景として、新しい恋愛の概念がまずは南フランスで形作られるのですが、12世紀の半ばに北フランスにもたらされるようになります。それにはアリノエール・ダキテーヌの結婚というはっきりとした契機がありました」ルイ七世と結婚後、離婚しアンリと結婚するがアンリは二年後イングランドの王位につくことになる。「結婚とともに移入された南フランスの洗練された文化は、1150年代にラテン語で書かれた歴史書や、古代ローマ時代の物語をフランス語で新たに語り直した古代物語のなかでまず最初の文学的表現を与えられました」2022/09/19
Mikio Katayama
4
中世フランスの恋愛観を当時の文学作品の引用とともに概説。引用はすべて既存の翻訳から(著者は原文をおそらく参照していない)。一応最後に参照文献一覧はあるが、引用ごとに翻訳者名を記すべきではないかと私は思う。2017/08/28
かび
0
流し読み2011/10/16