目次
総論『一遍聖絵』の中世
1 聖絵の魅力を語る
2 聖絵と一遍をめぐる世界(『一遍聖絵』の一断面;社寺参詣曼荼羅としての一遍聖絵;絵師が建てる建築;一遍とその一族;新宮と中世の港町;鎌倉南北朝期の一遍時衆と別時念仏;歓喜光寺と玉章地蔵;柳宗悦と一遍)
著者等紹介
五味文彦[ゴミフミヒコ]
1946年生まれ。東京大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アメヲトコ
7
2019年4月刊。2015年の「国宝 一遍聖絵」展開催を機に企画された一遍聖絵に関する論集で、聖絵の描写の問題について対談形式で語る前半部と、個別論考の後半部から構成されています。リアルにして作為的でもある聖絵は一筋縄ではいかず、とくに冨島論文で指摘される建築の描き直しの問題が面白いです。2019/04/29
イツシノコヲリ(丹波國)
4
前半は五味先生と冨島先生による座談会で後半は様々な分野の論考となっている。この絵図の建築はリアリティーがあたって信憑できそうだが、細かく分析すると構造的におかしな部分が散見され、書き直された部分があるという。建築史における絵図の扱い方については難しいものだと感じた。高野山の壇上伽藍と奥の院の位置関係が実際のものと異なるなど多くの謎があることも分かった。また鋤柄俊夫氏の「新宮と中世の港町」は、新宮下本町遺跡(城下町遺跡)の発掘調査の成果や熊野参詣道、寺の分析から中世港町である新宮津を明らかにしている。2022/12/17
もるーのれ
1
一遍聖絵は、日本中世でも屈指の美術品であるとともに、中世史の史料としても有用。京博で一挙公開された時に目を奪われた。本書でも、様々な立場の研究者が、前半では対談を、後半では論考を展開しており、引き出される歴史情報の膨大さには感心するばかり。特に印象深かったのが、建築史の知見からの論考である。下絵まで書いておきながら、建物や人物の描き直しが結構な数見受けられるというのが驚きであった。2019/08/31