感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
太田青磁
8
来所者と職員用の隔てなき駐輪場へママチャリを置く・清拭のあとのシーツの砂浜に打ち上げられし父は流木・クレヨンの入りこみたる爪を切りティッシュに散らすビリジアンいろ・おおかたは燃え尽きるもの包みいてカートンは清しき単位なり・ことごとく投げだされたる本のなか防災頭巾の娘が眠る・まず樋口一葉ひらりと落とされぬ六面透けいる募金箱へと・黙祷時に目を閉じるなと指示のありレジの金銭担当者には・捨ててきた「もし」の種から咲く花はあんなにきれいで見てはいけない・駅員は最終電車を行かしめる納棺師のごとき手さばきで2016/12/28
てくてく
3
仕事関係:「K音を重ねて硬し官公庁関連企業勤務規約書」「シュレッダーが驟雨のように鳴る真昼、雇用終了通知を受くる」「履歴書を三味線として流れゆく瞽女であるなり派遣社員は」、震災関係:「そのときはまだ笑えていた 揺さぶられ初校の赤ペン転がりし午後」「黙祷時に目を閉じるなと指示のありレジの金銭担当者には」、そして父の挽歌:「死の床へ屈みて歌の種拾う愚かな愚かなあなたの娘」が印象的な理知的な歌集。2020/04/17
すずき
3
何という生活感の濃さだろう。しかし身辺雑記に留まることのない主題の広がりがすばらしい。地に足のついた、作者の中で根付いている言葉を読むときに、歌の内容如何に関わらず感じる幸福感を、今回も味わった。しかしそれは栞文で服部さんが絶妙に指摘する表現者の姿勢と一緒にバランスよく立っている。新年一発目の歌集から質の良いものを読んだ。2017/01/11
浦和みかん
3
作者は内に激しい感情を持っているけど、作品ではぎりぎりで平静を保っているような印象を受けた。離婚により子の一人と離ればなれになってしまうのが悲しい。2016/12/26
あや
2
震災を詠んだ歌もお子さんを詠んだ歌も仕事を詠んだ歌もお父様を詠んだ歌も好きです。2019/06/03