感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
bapaksejahtera
10
歴史を考える時に誤るのが、現代人視点で過去の人々の思考、特に宗教心を評価しがちな事。これが中世初期の顕密仏教を政治支配や領主的寺院の収奪手段としてのみ観念する、マルクス主義的解釈である。本書ではやんわりこれを批判した後、我が国浄土教の進展に伴い社会に輪廻を伴う三世因果や汎神論唯心論が如何に広まったかを追う。元寇以来須弥山思想を根拠として世界観が拡大したのが興味深い。源信・慈円などの時代の記述は丁寧だが、法然から親鸞に変わり中世的な破調の仮名文を直に用いる等不親切な説明となる。著者が大谷の先生の為だろうか。2022/08/21