山室軍平選集

山室軍平選集

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  • サイズ A5判/ページ数 11冊(/高さ 22cm
  • 商品コード 9784820593584
  • NDC分類 198.98
  • Cコード C1316

出版社内容情報

《底本:『山室軍平選集』全10巻・別巻1,1951年(昭和26年)~1956年(昭和31),
「山室軍平選集」刊行会》

ゆかた掛けのキリスト教
鈴木範久
飯田蛇笏に
だいたんに銀一片を社会鍋
との俳句がある。
歳時記をみると、救世軍の「社会鍋」、「慈善鍋」は、りっぱに年末の季語になっている。
「クリスマス」はともかく、キリスト教の特定の教派の活動が、俳句の歳時記にも載るほど定着した例はまれである。
それほど救世軍の社会鍋は、師走の日本の風景に化した行事になっている。
山室軍平は、この日本の救世軍を代表するのみならず象徴する人物である。
主著『平民之福音』などにあらわれる山室の精神は、まさに素朴な俳諧の精神にほかならない。
現に同書には、「澁がきやまる八年の恩知らず」とか、「知らいでも恥にはならぬふぐの昧」などの人生訓がしきりと顔をみせる。
近ごろ、視線の高さを同じにするとの言葉をたびたび聞くが、山室の伝道は、最初から、その姿勢で一貫していた。
ちょうど百年前の秋、イギリスから来日した救世軍の一行四人は、そろってゆかた掛けで上陸して驚かせた。
これを受けついが山室の選集にはゆかた掛けのキリスト教が詰まっている。
人物論や書簡も収録され、これらは山室本人のみならず登場する多くの人物の史料としても貴重である。
各巻の「解説」は子息の武甫氏によるもの。
生前研究会などでお目にかかった印象どおり、身内と学究との両面を生かした水準の高い解説である。  (立教大学教授)

文・弁論・行動の人
阿部志郎
「平民の福音」は、明治32年に出版されて以来、今日まで525版を重ねているという。
聖書を除けば、キリスト教書でこれはどのロングセラーはないのではないか。
これを書いた山室は、わずか28歳で、しかも、多忙な時間を割き、2週間で脱稿している。
救世軍の大学植民館が、神田の火災の火元とうわさされた時の釈明文といい、「ときのこえ」に載せた娼妓に寄せる文といい、山室の文章は、理路整然、かつ、心を打つ。
後世に残る名文というべきだろう。
山室は文の人である。
平易にして熱のこもった説教は、数多くの伝導者のなかで、賀川豊彦・木村清松等大衆説教家と並んで五指に数えられるほど説得力のある卓越したもので、山室は、秀れたスピーカである。
フランス政府が学校の副読本に収めるため代表的社会事業家の推薦を求めたのに対して、日本政府が挙げたのは、石井十次・留岡幸助・岩橋武夫、そして、山室軍平の四人だった。
山室に指導された救世軍の社会実践は、日本社会事業史で傑出している。
山室は、行動の人である。
文章に巧みで、弁論に勝れ、豊かで温かい実践力と、三つの資質を兼ね具えた人はきわめて少ない。
この類い稀れな山室軍平という偉大な人間像と、選集において出会うことができるのはなんと幸いなことかと思う。
けれど、山室の生涯を支えた真摯で敬虔な祈りの生涯を、選集から読み取れる人が何人いるだろうか。  
(横須賀基督教社会館館長)

救世軍と矯風会
高橋喜久江
救世軍と矯風会は廃娼運動の同志である。
その関係は山室軍平の明治期にはじまり、現在に至っている。
私がいま事務局長をつとめる「売買春反対ととりくむ会」は、売春防止法を獲得した組織の後身団体であるが、救世軍は当初から参加団体であるし、婦人保護事業の現場の一端を共に担ってきた。
山室軍平の目ざましい活躍は夫人の“内助の功”に支えられている。
機恵子夫人は結婚前は矯風会の活動的なメンバーであり、軍平と結婚してからは夫を支えるとともに子女を生み育て、自らも救世軍の活動、婦人救済事業のために働き、若くして天に召された。
彼女の死を聞き、矢島揖子矯風会初代会頭は「お機恵さんはこれで楽になった」ともらしたという。
日本の救世軍の創設は山室軍平の存在なくして語れまい。
救世軍の組織のことはよく知らないが、万国本営の支援と指示をうけつつ彼の活躍があったのであろう。
いま社会福祉の必要性がいわれ各方面のとりくみがあるが、初期より個人的事業でもなく公立でもない救世軍の社会福祉活動は福祉の原点であろう。
今後の課題を果すため、先人の志を継ぐひとが多くあらわれるよう、この出版がそのために役立つことをねがう一人である。
(日本キリスト教婦人矯風会)

「さびるよりは、すり減るほうがよい」
朝野洋
山室軍平選集は、山室の死後比較的早い時期に残された膨大な資料の中から、長男山室武甫氏によってまとめられ、戦後の復興途上にあった救世軍のみならずキリスト教界や社会事業界に対して、「心は神に、手は人へ」を喚起した価値のある書であった。
「さびるよりは、すり減るほうがよい」とは、山室軍平の生活信条であった。
彼の人物像が書かれたものの中に見える。
岡山の山奥貧乏農家の末子が、玉子断ちをして祈る母の愛をうけ、逆境をも糧として成長する。
彼の人生を変革したのは、十五歳の時のキリスト教への入信であった。
明治28年、救世軍の日本渡来と同時に献身、正に魚が水を得たごとくに彼は救世軍の中に生きた。
「日本人をして日本人を救わしめよ」という、万国救世軍の創立者ウイリアム・ブースの言葉にこたえ、日清・日露・第一次大戦に続く不況、あるいは国の体質ともいえる堕落した社会に、救世軍を成長充実させたその指導力は、世人をして「救世軍の山室か、山室の救世軍か」と評価せしめた。
これ程緻密に社会を見、誰にもわかる平易な説教、絶えず世の需要をとらえて、人の痛みや人間社会の恥部に迫った人はいない。特筆すぺきは、彼の知己の広さであり、身分に関係なく人を救世軍事業に加わらせようとする熱心さである。
今回復刻される選集が、彼の他の多くの著書とともに、日本の精神社会を祝福するものとなることを願ってやまない。
(救世軍顧問)

山室軍平選集とは
日本に於ける救世軍の貢献者である山室軍平の膨大な著作を、長男である山室武甫氏が一九五一年(昭和256)から一九五六年(昭和31)にかけて編集し刊行した。
全10巻・別巻1の大作で、武甫氏自身が巻末解説を執筆。
この解説は、高水準で評価が高い。
「山室軍平選集」が、救世軍日本渡来百年を迎える年に復刻されるのは、日本宗教史上のみならず、社会事業史研究の上からも有意義である。

山室軍平とは
1872年(明治5)、岡山県に生まれる。
救世軍の多大な貢献者であり、社会事業の歴史を語るうえでなくてはならない人。
一五歳の時、街頭での伝道に接し入信。
その後同志社大学で神学を学ぶ。
上京後救世軍に加入。
以来一生を救世軍に捧げ、布教活動の一環としてさまざまな社会事業(女性救済、児童保護、結核療養所な
ど)を行う。
特に廃娼運動が有名である。
著書は多数あり、特に『平民の福音』(初版・明治23年)は今日まで525版を重ねるという超ロングセラーであり、現在では英語版・韓国語版も出ている。
1940年(昭和15)没。

救世軍とは
 英語で、The Salvation Armyという。
1878年、英国人ウイリアム・ブース(Wiliam Booth)によって創立されたプロテスタントの一派である。当初は産業革命により疎外された人々への布教活動をしていたが、より一貫性のある敏速な活動をするため、軍隊の階級制を取り入れた新方法を編みだした。
それが現在の《救世軍》である。
《救世軍》は、ロンドンに万国本営があり、百ヶ国の国々で活動を行っている。
日本には1895年(明治28)に上陸し、戦中・戦後の荒波を乗り越え、現在全国各地で活動を行っている。
☆内 容

第1巻 聖書研究
The Studies in The Bible
『山室軍平選集』刊行の辞/「聖書の感化力」/「基督伝の教訓」/「聖書の人物」/聖書の研究/聖書的生活論/「聖書通読表」/十誠/悲哀の人(イザヤ書第五十三章を読む)/主の祈祷/コリント前書第十三章/信仰の人(ヘブル書第十一章を読む)/ギブソン著「馬太伝講義」序/解説

第2巻 説教集
The Sermons PartⅠ
「平民の福音」/「実行的基督教」/「十字架の教」/「罪を救ぶ力」/キリストの神性/キリストの復活/キリストの再臨/キリスト来る/奇蹟/肉体の救/三種のバプテスマ/殉教者/聖霊にて満され/使徒的の宗教/苦労人なるイエス・キリスト/実行的の宗教を提唱す/日常生活の宗教/車夫諸君に基督教を勧む/悪しき遺伝を改むる力あり/キリストとパンの問題/愛国心と基督教/学者と実業家/わが子に語る/互に足を洗ふべし/極悪人に往け/ダビデとゴリアテの物語/解説

第3巻 説教集(下)
The Sermons PartⅡ
基督教講話/天の父に帰れ/青年への警告/病床の慰安/神/基督/根本の救い/一寸待て/母を讃へよ/罪/日本精神と基督教/心の病/母の愛/人の親の宗教/解説

第4巻 信仰の実践と修養
The Practice and The Cultivayion of The Faith
「聖潔とは何か」/「聖潔の手引」/「信仰増進論」/「人生の旅行」/「労働の宗教的意義」/奉教五十年/「信仰の生涯」巻末に題す/聖歌十篇/解説

第5巻 伝道論集
The Collection of Evangelical Works
伝道者論/救世軍略史/個人伝道/「一人が一人を」/「救世軍の立場を弁明す」/救世軍の国際主義/時局に対する救世軍の指導方針/「十分一献金論」/特選の民/回心者指針/皆兵自給論/主力を平民伝道に注げ/各小隊は平民伝道に参加せよ/各小隊を愛隣館小隊たらしめよ/ビレモン書を読む/中保の祈祷/リバイバル/如何に信徒を造るべきか/「軍令及軍律丘ハ士の巻」/「救世軍観」序/罪を天下に謝す/救世軍と宗教法案/候補生を志願せよ/新に宗教界に入らんとする人に/オックスフォード・グループ運動に学ぶ教訓/遊郭伝道に就て/「反省デー」/鉄は熱いうちに打て/小林君に寄す/就任の辞(書記長官)/新に任務に就くに当たりて(司令官)/顧問就任に際して/解説

第6巻 社会事業及社会問題
The Social Works The Social Problem
「社会事業家の要性」/「弱者の友」/戦時救済管見/最近欧米社会事業概観/「公娼全廃論」/「公媚制度の批判」/「不幸女の救護」/機恵子寮開設に際して/芸者とは何ぞや/飛田遊郭反対意見/吉原の代表者と語る/府民の恥辱/「禁酒のすゝめ」/「禁酒と基督教」/二十五歳禁酒の必要/酒飲感化院を観る/向上と堕落の分岐点/全国禁酒大会に寄す/休戦に対する感想/自殺者の救/三原山からカルバり山へ/大震災に於ける救世軍/白米慈善売/東北凶作地の為に訴ふ/救世軍病院/貧民巡回救護/何故結核デーを守るべきか/聖者ダミエンを賤す/癩未感児童保護事業/急を要する羅災/児童保育事業/児童虐待の事実とその防止運動/児童虐待防止と救世軍/外部の一友人として/愛隣隊とは何か/社会奉仕館の計画/在桑港社会事業館に対し特別御補助を願度件/刑状持の感悟/女囚の救護/独立奨励制度/慰問篭の事/年末貧民窟に慰問篭を配る趣意/慰問篭と仁人/年末吉例の慈善鍋雑煮餅の半価廉売/社会鍋の錠前/片輪者の救/七萬の同胞盲人の為に訴ふ/内国勧業博覧会前の救世軍コーヒー店に就て/三個の提案/救世軍の禁酒一膳飯/印度の飢饉/「鉄窓の廿三年」序/競馬を禁ずべし/賭博を止る伝授/触目偶感/身の上相談/解説

第7巻 伝記(上)ウィリアム・ブース伝(完)
The Biographies PartⅠThe Life of Wiliam Booth
救世軍創立者ブース大将伝/明治天皇に奉る書/明治天皇に奉る書の由来/大隈侯の大将観/伝導者としてのウィリアム・ブース/社会改良家としてのブース大将/解説

第8巻 伝記(下)
The Biographies PartⅡ Various
「日本に於けるブース大将」前篇偉人の足跡/「救世軍大将ブラムエル・ブース」/「エバンゼリン・ブース」/「山室機恵子」/「山室悦子」/解説

第9巻 人物論集
The Comments about known Peoples
徳富蘇峰先生題辞/「山室軍平選集」の完結にあたりて(賀川豊彦)/「山室軍平選集」の完結に際して(「山室軍平選集」刊行会委員長生江孝之)
第1篇 国内篇(1.皇室及皇族の部 2.政治界及官界の部 3.実業界の部 4.教育及自由業界の部 5.基督教界の部 6.人道界の部 7.婦人界の部 8.救世軍士官の部 9.後進の部)
第2篇 海外篇(1.基督教史上の人物 2.世界の救世軍に関係ある人物 3.日本の救世軍と関係ある人物)
第3篇「復活の人」(1.根岸の御前 2.初春亭正子 3.お狂乱利三郎)「山室軍平選集」終刊の辞(編者)/「山室軍平選集」購読者芳名録/山室軍平著作目録/解説

第10巻 書翰集
The Letters from Gumpei Yamamuro
1.青年時代の書翰 2.公的書翰 3.牧会的書翰 4.家族及び親戚への書翰 5.教育界への書翰 6.婦人界への書翰 7.文筆関係への書翰 8.恩人・知己への書翰 9.社会事業界への書翰 10.官界及び政界への書翰 11.基督教界への書翰 12.外地及び外人関係の書翰 13.実業界への書翰14.知友への書翰 15.救世軍関係の書翰 16.後進への書翰 17.補遺石井十次氏宅書翰/CORRESPONDENCE IN ENGLISH/解説

別巻 追憶集
A Supplement:The Reminiscent Talks about Gumpei Yamamuro
1.外人の部/2.伝道界の部/3.社会事業界の部/4.政官界の部/5.教育界の部/6.青少年運動界の部/7.婦人界の部/8.実業及自由業界の部/9.文筆・出版界の部/10.救世軍関係の部/11.近親・知友の部/12.後進の部/付録長詩「山室軍平の生涯」宮川勇作詞