感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
89
若松英輔さんは「井上洋治神父の主著は「日本とイエスの顔」」と言う。井上神父の文章には数多く触れてきた私だが、この本は読んでいなかったので挑戦。やっぱり凄い。西欧思想の借り物ではなく、日本人としてのキリスト教を求める神父の思いが胸に迫る。旧約聖書と新約聖書の不連続性、「無」としての神の認識、父性的神から母性的神へ、道元や法然や鈴木大拙への共感、そして、その先にある「南無アッバ」…カトリックのカテキズムから明らかに逸脱した独自の見解を発表するのは勇気がいっただろうが、その考え方は、心にストンと落ちて感動的だ。2021/11/03
わいほす(noririn_papa)
5
こういう神父の説教が聞けるなら、なんとなくクリスチャンの私も毎日曜日、教会に行くのに(笑)。東大哲学科を出ているだけに古今東西の哲学に詳しく、また一方で日本の古典や詩歌、文化や自然を愛し、仏教の知識も深い(後に法然とイエスについてまとめた著書を出している)。2014年に帰天した井上神父の著作をまとめた全集の第1巻は、日本人としてのキリスト教を追求し続けた神父の処女作を収録したもの。この人がフランスのカルメル会に行く船の旅で、留学に向かう遠藤周作と出会ったことは神の奇跡かもしれない。(続きはコメントにて)2017/02/12
amanon
3
キリスト教関係の書としては例外的な売れ行きを示したとのことだが、この作品の存在は今回初めて知った。読み進めていくうちにつれ、「日本的なキリスト教の需要のあり方」について思いを巡らしていくうちに「似たようなスタンスの本があったよな…」と考えていたところ、解説に北森嘉蔵に触れているのを目にして「ああ、そうだった」と溜飲が下がった。ただ、著者北森の神学に対して、一抹の違和感を表明しているのが色々な意味で示唆的。ヨーロッパ的な伝統に囚われないキリスト教というのは、何かと問題はあるが、我々に課せられた課題。2015/09/10




