出版社内容情報
リアリズム写真界の巨人・土門拳の初のエッセイ集。
ひたむきに日本人と日本文化に取り組み、撮りつづけてきた土門拳の知られざる一面を読者はここに読みとる。
ペンにも絵筆にも託しきれないものを志して、カメラをにぎり、写真のリアリズムに達した著者のこの姿勢は鮮烈な感動を呼ぶ。
著者自選の写真15葉(ダブルトーン印刷)を収録した。
【書評再録】
●毎日新聞「私が選んだこの一冊」---田沼武能・日本写真家協会会長(1995年12月13日)=土門先生が脳溢血で倒れられて、写真の方の仕事が思うようにできなくなったころの前後に、いろんなところにお書きになったものを集大成したものです。この中には土門拳の写真に対する考え方、撮影方法、生き方といったものが折にふれて書かれています。
●ダ・ヴィンチ評---文・荻野目洋子(1995年4月号)=この一年に読んだ本の中で、特に印象に残っている。“写真”というたった1枚にかける情熱にも想像を絶するものがあり、最初に読んだときにも衝撃を受けたけれど、もう一度、現在の私が読んでとても印象に残ったのは、「……おでこに五本の小じわがあれば、五本の小じわが写ってしまうのである。四本に減るわけでも、六本に増えて写るわけでもないのである。」というフレーズ。“事実を事実として受け止める”土門さんのやり方は、写真だけでなく、ペンによっても思わずハッとさせられる箇所がたくさんありました。表現することの厳しさを学べる1冊です。
【読者の声】
■女性(28歳)=注文をして手に入れた甲斐有り。勇気と希望を湧きたたせてくれました。
【内容紹介】本書「まえがき」より
ぼくの数十年間書きためた原稿の一部が今度本になって諸君の目に止まることとなった。古い原稿がどれほどの価値をもつか、ぼくは知らない。古い原稿に対して諸君がどれほど興味をもつか、ぼくは知らない。しかし、諸君の目に止まることになった現在、なるべく故郷を忘れないと云うことと同じ様に、深い興味を諸君からもたれることをぼくは心から期待している。古い原稿でもあたたかい血の通ったように新鮮な興味を諸君がもつことを望んでいる。
昔を思えば実にさまざまなことがあった、ぼくは若かった。その若さにまかせて自分の若さを全面に強く押し出すように自己顕示欲が非常に強かった。それは今から考えると馬鹿馬鹿しいほどであった。その強さが前面に押し出す様ないやらしさが、その時分の意見なり仕事なりに露骨であった。しかし、それはそれでいいとしなければならないであろう。
自己顕示欲はぼくの年と共に後方に押しやられた。もうあまり自己顕示欲的な欲望に迷わされなくなった。昔は「鬼の土門」と云われたが、今は皆が「仏の土門」と云うようになったことでもわかるように、自己顕示欲はもはや後方へ押しやられたと思う。それは単に老いて若さが失くなったからと云うわけではない。ものに対して吟味する力が強くなったからである。ものに対して思考力が出て来たと云うことである。
しかし、そう云う力を抜きにしてガムシャラに自分の考えを表面に押し出して考える考え方には、年をとった現在では考えられないほどの良さがある。若い者には若い者だけの考えの強さがある。それはぼくが若い時と同じである。今をなるべく考えまいと云う若い者には、若い者だけの考えがある。それがどのように自己顕示欲にささえられていようとも、諸君よ! 今しばらくぼくの若い時の意見に耳を傾けようではないか。若い者は全体に溢れるような若い者だけの良さがあるのだ。今はまず、土門拳の若い時分の意見を聴こうではないか。諸君よ! 諸君の若さが素晴らしく感動するものであっても、ぼくの意見にも耳を傾けよう。
【主要目次】
ぼくの名前
略歴
不愉快な写真の話
デモ取材と古寺巡礼
現状
寝顔
棺の上に飾る写真
事実ということ
自写像
自叙伝
死ぬことと生きること
明成園
スランプを恐れないこと
写真はたくさん撮らなければならぬ
写真家志望の青年へ---弟子になりたいという手紙に答えて
肖像写真のこと雑話
梅原龍三郎を怒らせた話
女の写真
おでこのしわ
ルイ・ジュヴェの眼玉
久保田万太郎の鼻
マダム・マサコの頬骨
近藤勇の写真
リアリズムということ
肖像写真について
連作と組写真
画題のつけ方---画題は発想と直結する
リアリズムは自然主義ではない
人間の目、カメラの目
アマチュアはなぜ写真が下手か
風景写真
手でつかめる風景
赤いタンツボの話---私の作画精神
内容説明
ひたむきに日本人と日本文化に取り組み、撮りつづけてきた土門拳の知られざる一面を読者はここに読みとる。
目次
ぼくの名前
不愉快な写真の話
デモ取材と古寺巡礼
棺の上に飾る写真
自叙伝
明成園
写真は沢山撮らなければならぬ
写真家志望の青年へ―弟子になりたいという手紙に答えて
梅原龍三郎を怒らせた話
久保田万太郎の鼻
近藤勇の写真
連作と組写真
リアリズムは自然主義ではない
赤いタンツボの話―私の作画精神〔ほか〕
感想・レビュー
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ミッチ
ほじゅどー