感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
20
昭和61年7月刊。私が15歳の時に刊行されたものを今さら読む。著者は1965年3月生まれで私より6学年上。私が稚拙な散文を書いていた頃紀野さんはこんなにも完成度の高い文語の短歌をたくさん詠まれていた。モチーフは多岐にわたり、美しい。巻末のエッセイもあとがきもユーモアにあふれ面白い。 ほんに吾が妬みごころのつよきまま夾竹桃の庭にそなたと/音楽は葡萄酒色のささ波のウィンナ・ワルツ ただひとたびの/約ししを吾はかへり来む阿波なるや藍の眼のさゆらぐ岸辺 ※ちなみにすべて書き下ろしだそうです!2024/11/20
garyou
3
なぜかどことなく谷山浩子の童話を題材にした歌を思い出すところがあって、「姫様」とかが出てくるからかなあ、それとも嫉ましさを詠った歌があるからだろうかなどと考えてしまう。短歌だけでなく随筆「東から吹く風の便り」もおもしろく「わさび(わびとさびが結合したの意)」な文章の風格を目指していたり、ひまを讃えたりしていい。さらにいえば坂田靖子の解説もいいし(どういう関係なのだろう?)、書きたくないのに書かされたあとがきの題名が「無念の木枯らし」というのもすばらしい。2024/05/20