出版社内容情報
内容説明
中国人兵士が自ら語った、中国軍の腐敗と略奪の記録。昭和13年に刊行されるや、またたく間に100万部を超えるベストセラーとなった、「知られざる」戦争文学の名著が、現代に甦る!
目次
塹壕生活
斥候
恐ろしき芋掘り
日本の恋人
慰労隊
仲間喧嘩
呪われた中隊
白兵戦
逃亡か投降か
中隊長帰る〔ほか〕
著者等紹介
陳登元[チントウゲン]
中国・重慶出身。父親が新日家であったことから、10代なかばで日本に留学。その後、大学卒業を翌年に控えた昭和12年8月に本国へ一時帰国したところ、中国軍に強制徴募され、江南地方の戦線に送られた。2カ月間におよぶ日本軍との激闘ののち、重傷を負って戦線を離脱。収容された上海の病院を退院する直前に脱出すると、『敗走千里』の原稿を一気に書き上げ、日本にいる別院一郎氏に送付した。その後の消息は不明(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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T坊主
12
留日中国人が帰国し、前線で冷静な目で戦争のありさまを書いた本。なぜこの本がGHQにより発禁になったのか、分からないが、国民党軍の規律が良くない為か?1)督戦隊という前線が不利な状況から逃げてくるのを退却させない為に味方が見方を撃つという。中国なら?ではの事かな。寄せ集めの軍隊で士気も低い。2)匪賊のような者もおり、金目のものや、取放題に略奪したり、強姦したりと。上層部も特権をふるい私情をはさんで作戦をしたりと、国民党軍、中国人の特質がよく分かる。今の中共軍も同じような体質なのだろうか。2017/09/21
新父帰る
6
昭和13年に日本で出版され、戦後GHQに依って没収・廃棄され、平成29年に復刻版として再度世に出る。著者は重慶出身の中国人。14,5歳の時に来日して日本の大学3年まで日本にいたが、昭和12年に帰国後突然、国民党政府から強制徴募されて上海の戦地へ行かされる。戦地で2カ月、九死に一生を得ながら、重傷を負い、病院から抜け出してこの本を書き上げる。たった二カ月の戦地であったが、おぞましい体験が綴られている。原稿を日本の恩師に送り、恩師が加筆訂正して昭和13年に刊行。当の本人はその後音信不通となり、行方知らず。2022/10/30
コカブ
5
小説の内容は、第二次上海事変が起こって日本留学から中国に戻り、強制徴募された陳子明が主人公。陳が戦線で軍隊生活を送る話だった。作者と同じ境遇なので、おそらく自分自身を照らし合わせたのだろう。第二次上海事変はそのまま南京攻略まで移行する戦いなので、中国軍はひたすら敗走する。強制徴募から逃げようとして捕まったところを助けてくれた、王中隊長(日本の陸軍士官学校卒)。その上官の寵隊長(アメリカの陸軍士官学校卒)。前線に慰問に訪れた「慰労隊」の女性たち、そして陳の同じ分隊のメンバーが登場する。2018/06/25
好奇心
3
これは物語でなく、日中戦争の最中の中国人兵士が書いた、兵士の様子である、仲間同士の諍い・食べ物の奪い合い・自女性を巡る諍い・武器兵器の状況、物量とも不足する中での追い込まれ人間の性が描かれている、戦争は人間を人間でなくしてしまう極限の状況になってしまう・・恐ろしい2017/10/04
しょうじ
2
なんと空しい行いだろう。 徴発されて特段の意志もなく戦場に送られる。 逃亡すると処刑される。命令に従い銃を撃ち壕を掘る。命を曝して斥候に立たされる。 祖国の戦地で掠奪強姦を働き欲を満たすが、その兵も死んでゆく。 私はよく戦争は悲惨だ。と経験者は言うけれど何がどう悲惨かはわからなかった。この本に書かれるような誰もが後生口にできないような下劣極まりない行いをして生き抜き、あるいは死ぬ。その行為のなかに何の意義も見出せない刹那的な時空に身を置かねばならなかったことが悲惨だったのかも知れないと感じた。 2020/03/11