内容説明
Cthulhuの復活が近付いていると不安視されている近未来、日本のとある寂れた漁師町に調査チームが訪れる。彼らは対Cthulhu兵器を作るための研究所建設用の土地を探していた。この村は地形や海流の関係で、常に陰鬱な気候の土地であり、淀んだ海水の中には奇形の生き物が多く住みついているいわくつきの土地であった。鬼才、渾身の書き下ろし!「C市」(2002年)の前日譚。
著者等紹介
小林泰三[コバヤシヤスミ]
1962年、京都府生まれ。大阪大学大学院修了。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞し、デビュー。98年「海を見る人」が第10回SFマガジン読者賞(国内部門)を受賞し、同短編を表題作とした2002年刊の短編集は、第22回日本SF大賞候補作となった『ΑΩ(アルファ・オメガ)』に続き、第23回日本SF大賞候補作となる。『天獄と地国』、『ウルトラマンF』でそれぞれ第43回、第48回星雲賞(日本長編部門)を、また、『アリス殺し』で2014年啓文堂書店文芸書大賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あも
77
C!それは声に出して言ってはいけない言葉。ハリポタのヴォルデモートさんみたいだな…。ラブクラフトという一個人が作った神話は彼の死後世界中に広まり、今もフォロワーの心を掴む。そう、我らがヤスミンも。クトゥルーを研究するグループ(研究者のボスの博士がガチ屑)が日本のとある奇妙な現象の起こる港町へ。魚のような顔をした住民たち、腐臭を放つ奇怪な魚。そして安定の妖怪大戦争。グールに宇宙生物にもう何でもあり。ヤスミンまたしてもノリノリである。『玩具修理者』とのガッツリリンクもあったりしてファンならきっと楽しめる1冊。2018/12/29
うめ
20
やっぱりヤスミンの書くくとぅるーは控え目に言って最高。最近ヤスミン内で流行りなのか、さまざまなクロスオーバー、仁義なき怪獣大戦争ももちろん面白くて捨てがたいが、オリジナル短編な、C市は改めて再読しても最高すぎて身体中から汁が滲み出てくる。血沼メソッドを継いだ彼らの活躍譚を今後読めたりするのだろうか。編集さんたちは、くとぅるーやウルトラマンやヤスミンの大好きなあれやこれやを燃料に、ヤスミンの筆の赴くままに任せて欲しい。文字を触媒に邪神が読み手の脳の数だけ生まれ、世界をきちんと侵してくれるから。いあ。いあ。2018/12/22
miroku
17
小林泰三らしい狂気!2019/09/29
nil
11
「C市」は何度めかの再読。何度読んでもオチが最高に好きだ。本書のお目当て「C市に続く道」は腐臭漂うぐじゅぐじゅとした描写が強烈な本格シリアスクトゥルフ…のように見せかけたシュールかつコミカル時々シリアスないつもの妖怪大戦争。へんてこで論理的な登場人物たちのへんてこで遠回りな会話は相変わらず気持ちのよい気持ち悪さ。そしてへんてこなやつ程よく出来るといういつもの大好きなパターン。過去作ネタも上手く散りばめられており、中でも「玩具修理者」との繋げ方が最高だった。「玩具修理者」好きは是非読んで叫んで欲しい。2021/05/07
コズマ
11
2002年に発表された『C市』と、本作のために書き下ろされた『C市に続く道』が一冊に収録されている。両作が凸と凹のように噛み合う部分があって面白かった。氏の最初期の作品である『玩具修理者』や『酔歩する男』に関連した箇所もあり、クトゥルー要素に限らず本来の小林泰三要素もふんだんに含まれた内容は読み応えあり。2019/05/02