内容説明
日本の民俗社会の想像力が産み出した妖怪について、学際的な視点により中世から近代に至る様々な歴史的資料を通し、妖怪文化史を構想する。
目次
狸は戦い、舞い踊る―近代芸能における狸のイメージ
異界のイメージと廃墟―一八世紀のピクチャレスクから現代映画までの表象風景
怪奇の文化交流史の方へ―田中貢太郎のことなど
化物尽くしの黄表紙と合成本をめぐって
お菊虫伝承の成立と伝播
予言獣アマビコ・再考
わざはひ(禍、災い)の襲来
親鸞と蛇体の女―仏教説話から民談への軌跡
琵琶をめぐる怪異の物語
絶縁の呪力―縁切榎の由来をめぐって
妖怪・怪異に狙われやすい日本人の身体部位
怪異・妖怪呼称の名彙分解とその計量
著者等紹介
小松和彦[コマツカズヒコ]
1947年生まれ。東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程修了。国際日本文化研究センター教授、総合研究大学院大学教授。専攻、文化人類学・民俗学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mittsko
5
「伝統と創造」「進化する」「新時代」とつづく「妖怪文化叢書」全四冊の第一巻。小松和彦率いる日文研「妖怪学」チームの研究成果。鬼、化物、幽霊、異界、怪談、説話と民話などが登場する史資料・作品の研究を、「怪異」「妖怪」という概念でくくり上げた学際的研究を展開し、一大ムーブメントを生んだ。ボクには、佐々木高弘「畏敬のイメージと廃墟:一八世紀のピクチャレスクから現代映画までの表象風景」が面白かったです。なお、長野栄俊「予言獣アマビコ・再考」も所収。「アマビエ」のことですね2023/08/21
ひらりん
1
「妖怪・怪異に狙われやすい日本人の身体部位」が興味深かった。現在の日本人とは異なる身体感覚(解釈)を垣間見ることができ、自分がどれほど科学的観点にとらわれているか再確認した。2011/03/04
藤月はな(灯れ松明の火)
1
妖怪文化が如何に発展してきたか映画などの例を交えながら紹介しているので大変、分かりやすかったです。「怪異はどこからが侵入しやすいか」や「言葉の分解によって現れる妖怪用語」など興味深いことが目白押しで読んで楽しかったです。2010/01/05
ekura
0
小松先生よりいただきました。多謝。十二分に刺激的な論文が載っているが、基になった報告書(非売品)のほうがさらに刺激的だ。すべて収録できなかったものか。せめて基の報告書の目次なりとも掲載すべきではないか。2010/01/27
seitr
0
玉石混交。長野栄俊「予言獣アマビコ・再考」は、アマビコが19世紀の「転写」文化を背景に生まれたものであることを示した良作。3本足で描かれるアマビコが、もともと四本足だった可能性もある、というのは、推測ながら鋭い指摘でした。なるほどー。2009/11/27