内容説明
フィリップ・アリエスは同性愛こそ「純粋状態でのセクシュアリテ」だといった。ジル・ドゥルーズは、プルーストにおいて同性愛が「愛の真実である」とみなした。大作『失われた時を求めて』を精査しつつ、「同性愛」の多様、多彩な世界を文化史的視座から浮き彫りにする。
目次
序章 あえてその名を告げぬ愛
第1章 ゲイ小説としての『失われた時を求めて』
第2章 時代的背景
第3章 母親は同性愛の原因となるか
第4章 ユダヤ人であることとゲイであること
第5章 キリスト教と同性愛
第6章 社会における同性愛
第7章 美意識豊かなナルシストたち
第8章 サド・マゾヒズムについて
終章 文学の主題としての同性愛
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
67
ユダヤ人=去勢=女性化=同性愛という連関が中世以来人々の意識に在ったという指摘に驚く。ユダヤ人と同性愛者は同じ「呪われた種族」だったらしいのだ。プルーストは作中の同性愛者にどんな役割を託したのだろう? 著者は社会の流動化を促す反社会的存在としての役割をあげているが、注目すべきは、彼らが両性具有という神話的な幻想の一端を担ったという指摘である。シャルリュスもアルベルチーヌも生物的な性を超え、人々の良識の底に潜むアンドロギュヌス幻想を追い求める漂泊者だったらしいのだ。同性愛というテーマの意外な広がりを知った。2016/02/28
たーぼー
35
同性愛に関する社会文化面からの論点の整序が充分になされており考察本としてかなり秀逸といえる。それになんといってもプルーストだ。偏見の時代を「奔放なる性」の体現者として生きた彼へのamourに満ち溢れているのが本書の良いところ。また「同性愛者と芸術家的資質」の項も興味深い。彼らに卓越した美的感覚を有する人が多いことも頷ける。さて、現代カルチャーはプルーストの目にどう映るのか。美食家の彼には好都合かもしれない。社交界の有様は彼好みなのだろうか。彼は下層階級の猥雑な若者達との交流も好んだ。それは上手くいくだろう2015/04/09
山口透析鉄
27
これも県立図書館の本です。 失われた時を求めて、実は私が途中で読むのを断念したほぼ唯一の小説です。第3編あたりで2回、挫折しています。 ただ、プルーストにも同性愛的な傾向はあること自体は知っていましたので、この本の分析自体には特に異論もないです。 ただ、もう30年近く前に執筆された本ですので、読者側の性的指向や性的少数派に関する理解、この本が出た頃よりはさすがに少しは改善しているでしょう。(性的嗜好とSM等も) これも網羅的な本で、欧州におけるユダヤ人のメタファーその他の知識も必要そうな本ではありました。2024/10/04
俊
25
「難解なプルースト」を読む際の良きガイドとなる本。プルーストの複雑な内面と、それを作りあげた様々な"事象"を踏まえて、「失われた時を求めて」を読み解く。また、社会における同性愛も考察する。非常に丁寧な解説で、「失われた時を求めて」を読んだ時にはよく分からなかった部分も、ある程度理解することができた。ネタバレを気にしないのであれば本書を先に読むのもいいかもしれない。良い本だと思う。2015/01/06
みかん
1
「失われた時を求めて」から同性愛というかクィアネスの話題に焦点を当てるのは何もおかしいことではないんだなという学びが得られたし、やはり同性愛的な要素にとりわけ着目して作られたであろうバレエの「プルースト」は秀逸だなあ2022/08/27




