出版社内容情報
中山間地域を訪れると、小さな集落で不思議な思いをさせられることがある。土地の人が「このあたりには、以前は店が数十軒並び、パチンコ屋、映画館、呉服屋、旅館まであった」と話してくれた場所には、今では草むした空間が拡がっている。中山間地域で人口減少が進むと商店の維持が難しくなり、最後は「酒店」「理容店」だけになってしまう。特に二〇〇〇年代半ば以降、最後の拠り所とされていたJAの店舗の閉鎖が重なり、問題は一気に顕在化していった。
同じ頃から「買い物難民」「買い物弱者」の問題がクローズアップされてくる。さらに、二〇一四年の「日本創成会議」による「地方消滅」論の提起は、人びとに大きな衝撃を与えた。
そして「現場」に足を踏み入れると、伝統的な移動販売、買い物代行や配食などの新たなサービス、あるいは一〇〇年以上前から共同売店を設置してきた沖縄のケースなどに出会うことになる。その担い手は、住民組織、食品店・食品スーパー、商工会、NPOなどであった。ただし、いずれも事業採算性の面では厳しく、担い手の高齢化も進み、持続可能性に懸念が生じている。
そのような点を注視し、本書では全国の「買い物弱者」を支える象徴的なケースとして、沖縄県や東日本大震災の被災地をはじめ全国二〇のケースを採り上げた(本編一〇章+補論一〇本)。そして、それらの事例の意味するものと今後の課題を明示し、持続可能な取り組みを進めていくためのあり方を考えることを目的としている。中山間地域の「現場」では、人口が「音を立てて」減少している。住み慣れた地域で、人びとが「普通の生活」をおくっていくためのあり方が問われているのである。(せき・みつひろ)
【著者紹介】
1948年生まれ。明星大学経済学部教授、一橋大学名誉教授。博士(経済学)。東日本各地の震災復興・産業再生にアドバイザーとして携わる。『沖縄地域産業の未来』『地域産業の「現場」を行く 1~8』『東日本大震災と地域産業復興 ?T~?W』など著書多数。
内容説明
人口減少・高齢化に伴い、「買い物」が困難な人びとが増えている。住民組織、食料品店・スーパー、商工会、NPOなどによる各地の多種多彩な取り組みに、高齢地域社会の針路を読みとる。東日本大震災の被災地を含む全国20地域・30事業を精査!
目次
人口減少、高齢化と中山間地域における「買い物弱者」
第1部 中山間地域の移動販売、買い物代行、バス送迎(大分県佐伯市/買い物弱者を支える多様な展開―買い物代行、配食サービス、移動販売、出張美容室;高知県土佐市/30年にもわたるバス型移動販売―地元スーパーのサンプラザとハッピーライナー号の展開;鳥取県日野町・江府町/山間地の閉鎖店舗を引き継ぎ、移動販売―店舗5店、移動販売車5台を展開(安達商事)
秋田県横手市/無料送迎バスを運行する地元スーパー―山間地に9路線を展開(マルシメ)
岩手県西和賀市/社協、スーパー、ヤマト運輸が連携する買い物支援―買い物代行と見守り(まごころ宅急便)
北海道札幌市/店舗、宅配に加え、移動販売車75台を展開―北海道全域を視野に入れる(コープさっぽろ))
第2部 中山間地域に店舗を展開(宮城県丸森町大張地区/住民出資の共同売店を展開―食料品店が閉鎖、商工会主体にスタート(大張物産センターなんでもや)
岩手県北上市口内町/共同売店化する農産物直売所とJA売店跡の再開―人口減の旧町の仕事と暮らしを支える(あぐり夢くちない、店っこくちない)
島根県美郷町/閉鎖されたミニスーパーを商工会有志で復活―調剤薬局を組み合わせる新たな取り組み(産直みさと市)
沖縄県/100年の歴史を重ねる共同販売―人びとの暮らしを支える仕組みと課題)
補論 各地の多様な取り組み
条件不利地域の暮らしを支える
著者等紹介
関満博[セキミツヒロ]
1948年富山県小矢部市生まれ。成城大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。現在、明星大学経済学部教授。一橋大学名誉教授。博士(経済学)。岩手県東日本大震災津波からの復興に係わる専門委員。宮城県気仙沼市震災復興会議委員。福島県浪江町復興有識者会議委員。受賞:1984年第9回中小企業研究奨励賞特賞。1994年第34回エコノミスト賞。1997年第19回サントリー学芸賞。1998年第14回大平正芳記念賞特別賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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