内容説明
金貸しは、どうも性に合わない―。札差高田屋の次男坊・新五郎は、夏五月の切米(幕臣への禄米支給)の直後、兄嫁だったお鶴と再会する。兄の惣太郎は先の二月に事故で亡くなり、お鶴は実家へと戻っていた。何をやってもかなわぬ兄を、近寄りがたく感じていた新五郎。だが高田屋の跡取りとなり、厳しくみえた兄の商いに隠された秘密に気づく…。武家の悲哀、淡い恋、家族の情。武士相手に金を貸した商人「札差」として生きる若旦那の成長を、市井の哀歓のなかに瑞々しく描く。待望の新シリーズ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
44
金貸しは肌に合わないのに、高田屋の跡取りとなった新五郎。厳しく見えたものを見るようになり、その秘密を知ることで自分の中に覚悟ができたのだと思います。札差として生きる道を選んだ新五郎の成長と市井の人々の哀歓が染み入りました。瑞々しく爽やかな後味を感じます。2023/04/14
衛兵
15
直参の給与である禄米を担保に金を貸す「札差」。兄の急死により、札差業を継ぐことになった若旦那、新五郎。貸したくても貸せない侍たちに対し、兄は秘かに助けの手を差し伸べていた…NHKでドラマ化しやすそうな人情味溢れる時代小説。兄嫁とこれから進展はあるのでしょうか。2017/09/18
天笑院たか姫
6
札差高田屋の次男坊・新五郎は、兄が事故で亡くなった為、跡取りとなる。何をやっても兄には叶わないが、少しづつ自覚と成長の片りんがみえてくる。今後の嫂・鶴との進展が気にかかる。2015/09/07
ナツメッグ☆
5
札差の商いには馴染めない主人公新五郎の亡き兄に追いつき凌ごうとする魂の物語り。自分でも気づきながら封じている嫂のへの想いを蔵しつつ、嫂にサジェスチョンを求める。若旦那新五郎の心意気やよし。次作が楽しみだ。2015/03/28
テンプル
3
自分の能力を知り、理想の兄に少しでも近づこうとして兄の影を意識しながら励む姿がとても好ましい良い本でした。金貸しという因果な商売だからこそ、貸した相手の本当の幸せを思う気持ちはとても大事に思えました。兄嫁との関係も好ましく、続きが気になります。この方の書く江戸時代小説を読むと江戸の崩壊はわかるような気がします。2017/04/17