内容説明
「誠」の旗印の下、反幕派の男たちを戦慄させた鉄の組織、新選組。局長の近藤勇は、盟友土方歳三、沖田総司らとともに、京都で任務に励んでいたが、徳川幕府の屋台骨は徐々に崩壊していた…。愛する妻子と女を残し、歳三らとともに没落する徳川家に殉じ、義と忠と夢に命をかけた男を描く、書き下ろし時代長篇の傑作。
著者等紹介
秋山香乃[アキヤマカノ]
1968年北九州市生まれ。中学時代は演劇部でシナリオやコントを書く。高校入学の頃より小説を書き始める。活水女子短大で司馬遼太郎を研究。卒業後、歴史サークルを主宰、会誌を発行、デビュー作の『歳三 往きてまた』(文芸社)が新選組ファンのみならず、時代小説ファンの支持を得る
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感想・レビュー
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きつねうどんそっくりおじさん・寺
97
文庫書き下ろしの近藤勇物語。著者は昨今幕末歴史小説で世に出てきた人だ。正直、余り期待せずに読み始めた。試衛館から池田屋事件に飛ぶ設定に面食らった。芹沢鴨不在に物足りない気がした。一旦読むのを中断した。しかし私が浅薄だった。この近藤伝は、新選組のピークから始まる滅びの詩であったのだ。厭な奴に描かれがちな伊東甲子太郎が珍しく格好良く、油小路では少し泣いた。厭な奴が誰もいないのに起きる悲劇がここにある。皆時代の犠牲者なのだ。主人公近藤勇は悲劇が増す程に尻上がりに格好良くなる。処刑に至る過程でまた泣けた。良い。2016/06/18
Die-Go
58
新選組局長・近藤勇の生涯を秋山香乃の筆で追う。『歳三 往きてまた』『藤堂平助』『総司 炎の如く』などに比べると若干の見劣りは否めないが、近藤勇と言う男の生きざまを見事に描ききった佳作。脇役で出てくる人物達も魅力的である。★★★☆☆2017/11/30
こばまり
48
そこはやはり女性作家。女が惚れる新選組像であった。局長贔屓の私には切なくて終盤読むのが辛かった。読友さんが仰るように珍しく伊東甲子太郎が好人物。アクの強い芹沢鴨があっさり不在、山南敬助のフェイドアウトをなるほどそう解釈するか等、知ったような口を利いておりますが新選組ファン新参者です。2016/08/13
金吾
36
武士になろうとし、武士以上に武士を貫こうとした人物として描かれています。長所も短所も書かれていますので人間的に感じました。山南、藤堂と天狗党を絡めたブブンハ印象に残りました。2024/04/01
Haru
34
読友さん頂き本。近藤さんが主人公ですが、土方・沖田・伊東さんも等分に割かれています。山南さんの解釈は北方謙三さんの「黒龍の柩」が一番好きですが、秋山さんの描き方も理論派の山南さんらしさがあっていいなぁ。品のある伊東さんの人物造形も好みで、伊東さんメインで読みたくなる。池田屋から斬首までの近藤勇を思想でも正論でもなく利でもなく、ただ「徳川の臣」であろうとする姿を淡々と書くことにより、単純で真っ直ぐな気性を際立たせていると感じました。ストーリーもあっさりとしてあまり血生臭さのない女性好みの新撰組だと思います。2015/05/17




