内容説明
ヤマト朝廷の構築期とされる五世紀代、東夷の一朝貢国として中国へ遣使し、その爵号を受けた讃・珍・済・興・武のいわゆる「倭の五王」の動向は、いまなおナゾにつつまれた部分が多い。本書は先学の研究成果を平易にしかも克明に追跡し、古代東アジア史における倭国の位置を改めて浮彫にしたわが国初の五王研究史である。
目次
第1 五王関係史書の渡来
第2 草創期の五王研究
第3 国学者たちの発言
第4 明治初年における異邦人の研究
第5 紀年論と五王
第6 修史局学派の研究
第7 明治期における傍流的研究
第8 寥々たる大正期の研究
第9 昭和前半期における研究
第10 不可解なる時政からの開放と新説続出期
第11 東アジア史の中の五王
倭の五王関係史料
倭の五王研究文献索引
感想・レビュー
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hyena_no_papa
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5世紀から6世紀初頭にかけて、中国南朝と通交した「倭の五王」に関する諸学説を詳細に辿っている。邪馬台国問題に比べて、今ひとつ地味な感のある「倭の五王」問題だが、『宋書』倭国伝の記載が、ほとんど地理的記事を含まず、主として朝献記事に終止している点から、立論の材料に乏しいゆえかと考えられる。ただ、百済・高句麗と倭との将軍補任についての考究から、当時の倭と韓半島三国との国家関係を探るという点では、史学的に有意義な研究対象であろう。また、『記紀』や鉄剣銘などの考古学成果も援用すれば、興味深い時代ではある。