内容説明
月刊誌「山と渓谷」に掲載され多くの読者の共感を得た、北アルプス、浅間山、南アルプスの山行記三篇に、書き下ろし作品一篇を加えた、著者はじめての紀行文集。
目次
ためらいの笠ヶ岳から槍ヶ岳
何度でも浅間山
つれられて白峰三山
山を下りてから
著者等紹介
南木佳士[ナギケイシ]
1951年、群馬県生まれ。作家・医師。1981年、難民救援医療日本チームに参加してタイ・カンボジア国境に赴き、同地で「破水」の第五十三回文學界新人賞受賞を知る。1989年、「ダイヤモンドダスト」で第一〇〇回芥川賞受賞。2008年には山登りを素材とした『草すべり その他の短篇』(文藝春秋)で第三十六回泉鏡花文学賞、翌年、同作品で第五十九回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chimako
81
登山と言うほどのものではないが山に行くことが好きである。同じ山でもそれぞれの季節に違う顔があり、体調によって厳しかったり緩かったりする。登りは苦しく下りは足に来る。いつも山へ行きたいなと思っている。作者の南木さんは浅間山の麓に暮らすお医者様。浅間山は庭のよう。心を病み、その後山が癒しとなった還暦近いおじさんの山行が描かれる。3000mを越す「アルプス」と呼ばれる山々には縁がない。ただ遠くから眺めるだけ。そこに息を切らし、熱中症を危惧しながら登山。ユーモアがあり達成感もある。自分は登らないけど羨ましい。2022/10/17
キムチ
57
懐かしい山々が次々と登場・・同行する思いでの一気読み。何処かと問われるともっとも心に染み入る歩きになったエリアばかり。少し上(と言ってもこの年代は5年くらいの違いは同年齢)章ごとの見出しが曲を浮かび上がらせ、メロディーと詞が空気を運ぶ。50歳を越えての陰鬱な症状の日々、業務仲間との山行で心に湧きあがるあれこれを文にしている。人間観察と自己分析・内省が読み手の気持ちにシンクロしてくる。シニア男性によく感じるプライド・拘りの競争心が見え隠れしているのも面白かった。白峰三山、槍、笠の山々が文の借景になっている。2022/10/06
しおり
28
忙しさから心を病んだお医者様の作者。奥様の支えで山を歩き始め、その後 北アルプス、南アルプスと厳しい山行を重ねた際の紀行。辛さとか心の正直な声がストンと府に落ちる内容でした。山を降りて時系列で山行を文章にすることでしか山から「からだ」を下山させることは出来ない、そうです。私も山に登ることが大好きですが、そんな感覚はゼロです(笑)。南アルプスや甲武信ヶ岳は経験してるのですが、浅間山や未経験の北アルプス 憧れの槍はいつか行きたい!2022/10/31
けんとまん1007
28
以前、山をよく歩いていたので、懐かしさもたっぷり。特に、新穂高温泉から槍ヶ岳へは、今でも、よく覚えている。そんな山を歩きながら、自分自身を振り返り、そして自然の懐に抱かれ、人との関わりの中で癒され、元気になっていく。その過程が、いくぶんユーモラスに描かれている。苦しさもありながら、楽しさもある。そして、いろいろな変化があるのがいい。山は、人のこころにも体にも、働きかけてくるのだ。2016/09/10
yyrn
20
登山口に車を止めて直登の山道を10分も歩くと汗が噴き出し、登山なんてするんじゃなかったと思うのが常だった。そんな泣き言を言いつつなんとか山頂に立てば、ヘロヘロながらも何か達成感が得られたような気がして満足する。そんなことを思い出させてくれる本だったが、作中で何度も一緒に登山する同行者を保健師とか放射線技師とか職名で表記することにちょっと違和感。医者でありながらパニック症とうつ病を患った作者が50を過ぎて妻と始めた登山で立ち直ったせいか、歩きながら何度も内省する場面が多かったが、確かに登山は向いているかも。2020/07/16




