内容説明
美術作品は、私たちの感性と知性の両方を楽しませてくれるものです。また、歴史を理解するとは、知性と同時に想像力を豊かに働かせることでもあります。だから、このようにしてボッティチェッリの作品を語ることは、そのための格好の視点を提供することになるでしょう。絵画の深奥とその文化背景、壮大な世界へ案内します。
目次
第1回 絵を見る(作品の観察と記述;パノフスキーによる「解釈の三段階」;神話のシナリオと絵画のシナリオ ほか)
第2回 絵を読む(「春」;新プラトン主義に基づく解釈とその問題点;「祝婚画」 ほか)
第3回 絵を楽しむ(ヴァールブルクとブルクハルトの遺産;イル・マニーフィコ時代のフィレンツェの祝祭とボッティチェッリ;ジョストラとその旗絵 ほか)
著者等紹介
岡田温司[オカダアツシ]
1954年生まれ。京都大学大学院教授。専門は西洋美術史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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蛸
13
ルネサンスを代表する作品である『ヴィーナスの誕生』を題材にして、絵画の読み解き方を丁寧に平易な文体で解説した本。 著者は、イコノロジーの方法を解説しつつ、ウィント、パノフスキー、ゴンブリッチによって発展したそれをロゴス中心主義(イメージをロゴスにのみ還元してしまうこと)であるとして斥ける。最後の章ではロゴス中心主義では取りこぼしてしまうものを掬うためにヴァールブルクが召喚される。そこではルネサンスが本来持っていた祝祭的な側面を象徴するカーニヴァルや聖史劇を参照にした広がりの中に作品が位置付けられるのだ。2021/10/30