出版社内容情報
従来あまり光を当てられなかった翻訳と翻訳家の軌跡を古代から現代までたどり本質を照明する。
内容説明
翻訳家という情熱家の姿を追いかけ、中世のアラビアから現代のヨーロッパまで訪ね歩くユニークな文化史。資料の森に分け入って、異文化接触の知られざる立役者に光を当てる。
目次
第1章 翻訳はいつからあるのか
第2章 バグダードからトレドへ
第3章 フランス・ルネサンスのパイオニア
第4章 不実の美女―ルイ14世時代の翻訳論争
第5章 翻訳に情熱をそそいだ作家たち
第6章 有名にして無名な翻訳家―時のヒロインとなった女たち
第7章 翻訳家組織のパイオニア
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
156
米原万里さんの著作に紹介されていた本。古くはエジプト古王朝の時代から現代までの翻訳の世界史(著者の辻由美さんの経歴からして西欧中心なのはやむをえない所)を語る。古代ギリシャの英知がアラビア語に訳され、やがてそれが西欧語に訳されることで、ルネッサンスに大きく寄与したことは知っていたが、知らなかった多数の偉大な翻訳家たちや、その労苦を知ることができた。ことに、エミリー・デュ・シャトレや、クレマンス・ロワイエ、そしてドニーズ・クレルーアンといった、女性の真に偉大な翻訳家の評伝は、読む者に強い共感を呼び起こす。2014/09/16
またの名
10
たった三語の訳し方がプラトンの著作の翻訳内で異端判定されたので首吊り&火刑に処されるなど、日陰の仕事でも過酷な生業。態度はデカいし自国中心的な気配を漂わせるフランスにおける翻訳の歴史という意外なニッチを掘ってみたら、論争あり理論書あり愛憎劇ありの興味深いエピソードが湧き上がる。仏語に対する仏人の馬鹿高いプライドにも関わらず最古の仏語文書は翻訳文といった話を、当人達に皮肉ってみるのも良し。ヴォルテールの情熱的な愛人女性は恐るべき才能を以って、その後200年以上に渡り新訳が不要な唯一のニュートン仏語版を訳出。2024/08/25
ともくん
9
フランスでの翻訳の歴史を日本人がまとめた、めずらしい本です。違う国の言葉からの翻訳というのは、同じ単語が無い場合が多く、大変難しいというのは、どこでも同じなのですね。2014/09/27
駒子
7
米原万里さんのエッセイで知りました。フランスの翻訳史。フランスでは「美しい文章だが、原文に忠実でない翻訳」を指して「不実な美女」と呼ぶというのが面白い。2014/08/22
ががが
6
1993年刊行、フランスをメインにした翻訳の歴史。翻訳という側面から文化の伝達を見ていくのはとても新鮮で、そもそも翻訳者という存在がなかなか文化史の表舞台に出てこないので知らないことが多かった。原文重視か訳文重視か、といった翻訳に関する論争や、「不実な美女」訳の是非など翻訳の技術的な問題にも歴史があることが分かる。訳す人がいなければ、その言語文化は伝えられず多くの人にとってはないも同然のものになってしまう。翻訳が文化史になかで果たしている役割を考えると、ある意味翻訳者は文化の伝道者と言えるのかもしれない。2022/09/21




