出版社内容情報
京都での出会いが起こした、小さな、確かな奇跡。孤独な半生を送ってきた千晴が生きる意味を見いだしていく、優しく強い物語。京都での出会いが起こした、小さな、確かな奇跡。
就職も決まった短大二回生の秋、篠崎千晴のもとに叔母から奇妙な依頼が舞い込んだ。ずっと存在を知らされていなかった「叔父」に届けものをしてほしい、というものだった。戸惑いながらも、千晴はある箱を持って彼を訪ねるが、その中身は――。出逢いが出逢いを呼び、人との縁が人生を確かなものにしてゆく。孤独な半生を送ってきた千晴が最後に見つけた場所とは……。京都の街が舞台の、涙が頬を伝い、胸が熱くなる再生の物語。
■著者
富良野馨(ふらの・かおる)
京都市在住。『少女三景―無言の詩人―』が新書館「第2回ウィングス小説大賞」にて優秀賞を受賞。2016年『雨音は、過去からの手紙』(マイナビ出版)でデビュー。
富良野 馨[フラノカオル]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chiru
131
恋するすべての人、傷つくすべての人の背中をそっと押してくれる物語。不仲な両親から、受け入れがたい傷を負った千晴。存在さえ知らなかった叔父との出会いは、千晴のなかの冷たい塊を少しずつ溶かし、新しい絆を育てはじめる。すぐそばにある、陽だまりのように包み込む光に千晴は気付かない。その優しい光に、早く気づいて欲しいと心から願う。自分を理解してくれる人が一人でもいれば、人生は無敵になる。千晴が自分に正直になるシーンは、心地よい涙に胸が熱くなりました。振り返りたいシーンがいくつも浮かぶ一冊です✨ ★52020/03/08
ポップノア@背番号16
64
複雑な家庭環境で育った千晴は短大生になってようやく自由を得る。そして就職も決まったある日、叔母から初めて叔父の存在を聞かされ届け物をすることに。偏屈な職人気質の竜司に最初は戸惑いつつも次第に彼の優しさを理解する千晴。私達は似た者同士なんだと。話の核心に迫るまでが長いが、「窓の外にいる」と感じていた千晴の心の成長をまさに叔父目線で喜んだ。彼氏になる〇〇さんも痛みが解るいい人だったなぁ。読後は「世界の端から歩き出す」というタイトルが希望に満ちていて胸に染みる。千晴が就職したホテルでの不思議な出来事も良かった。2022/01/21
緑茶
42
ホテルへの就職が決まった短大生・千晴は、叔母から届け物をしてほしいと頼まれる。届け先は存在すら知らなかったものの、近所に住んでいるという叔父(叔母の歳の離れた弟)だった。千晴は戸惑いながらも彼を訪ねるが、次第に彼やその周りの人と心を通わせるようになる。そんな中、就職先のホテルで聞いた怪談話、その真相を探るうちに新たな出会いが、、、。完全に表紙とタイトルに惹かれて読んだのですが、すごく心暖まるストーリーでした。叔父のシンさん、千晴ちゃん、他の人にも、「余すところなく幸せになってほしい」。2020/08/05
よっち
36
就職も決まった短大二回生の秋。篠崎千晴は叔母からずっと存在を知らされていなかった叔父を紹介され、その出会いから人生が変わってゆく再生の物語。両親の不仲に振り回され実家にも帰らなくなっていた千晴が出会った叔父・シン。彼とその彼女・レイコと共に過ごすうちに癒やされてゆく千晴の心境の変化があって、彼女との出会いがシンにとってもありようを変えるきっかけとなって、どこか似た者同士だった二人がそれぞれ迎える転機と、そのかけがえのない絆を信じられるからこそお互いが前に進むきっかけへと繋がってゆくとても素敵な物語でした。2019/01/25
あみやけ
22
読友さんから元気のないときに読むと元気が出ると勧められました。確かに、そういうストーリーです。生育歴って大きいですね。そういう意味では僕は恵まれているのかなって思いました。主人公が存在すら知らなかった伯父さん、しんさんと出会うことで生きる力をつけていきます。そして、新たな出会いが。自分の生きざまを語れる人が見つかると幸せだなって思いました。YAっぽいレーベルから出てますが、充分に大人が読むべき作品だと思います。2019/12/19