内容説明
「反乱軍はすべて鎮圧したとのことです」井上成美連合艦隊司令長官は、山本五十六軍令部総長にそう報告した。紀元節を明日に控えた2月10日の深夜、海軍省を囲んだ陸軍歩兵第一連隊の中隊は、横須賀鎮守府の陸戦隊により武装解除されていた。「皇軍相撃つという最悪の事態はなんとか避けられたのだろ」「ええ、我々には死傷者は一人もありません。ただ…陸軍省と参謀本部には彼らの面子もありましょうから陸戦隊は出していません」山本はうめいた。井上の企みに気づいたからである。陸軍大臣死亡、参謀総長重傷の知らせがおってもたらされた。昭和18年2月11日払暁は、後世「硝子の夜」と呼ばれ、この日を境に陸軍はもはや戦争どころではなくなった。大好評シリーズ、ついに完結。