内容説明
白川静は、甲骨文、金文など漢字の始原を訪ね、「文字は神であった」という斬新な視点に基づき、『字統』『字訓』『字通』を初めとした多くの本を著した。その研究により文化功労者に選ばれ、文化勲章を受章している。だが厖大な著書の故もあり、その全体像は把握しにくいものだった。博覧強記の著者が“巨知”白川静に挑み、その見取り図を示した初の入門書。
目次
第1章 文字が世界を憶えている
第2章 呪能をもつ漢字
第3章 古代中国を呼吸する
第4章 古代歌謡と興の方法
第5章 巫祝王のための民俗学
第6章 狂字から遊字におよぶ
第7章 漢字という国語
著者等紹介
松岡正剛[マツオカセイゴウ]
1944年京都市生まれ。雑誌『遊』編集長、東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授を経て、編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。情報文化と情報技術をつなぐ研究開発に携わる。また「連塾」など私塾を多数開催(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
88
博覧強記の松岡正剛さんが、これまた漢字の世界では並ぶものない白川先生の漢字の世界についてかかれたもので、その足跡を漢字という観点から記されています。松岡さんとしてはページが足りなかったような感じですが、私たちにはこれくらいが読みやすい気がします。私も10年以上前にかなり白川さんの著作を読みましたが、一人でこのような業績を成し遂げたとはとても信じられませんでした。白川世界の入門書としては先生以外が書かれたものとしてはこの本はいい本だと感じました。2015/08/10
mitei
40
白川静って人をあまり知らなかったけど漢字の由来をそこまで解明できるってすごいことだと思った。2012/05/10
しぃ
26
漢字を読みとき古代世界を開示した、白川静さんの業績をまとめた本。「漢字は借り物ではなく、音訓を用いた時点で国字になった」からこそ漢字をもっと理解しなくてはならない。当用漢字はまさに用いるべきものではないとの指摘が刺さりました。千年かけて漢字を理解して、そこから300年しか経ってないところで戦争によってそのほとんどを捨てられた。でも現代において記号としての文字を疑問に思うことなく使用している私たち。あの敗戦で失ったものは戦争を知らない私が想像するより果てしないものだったのかな。国語の原点を学んだ気がします。2014/02/25
ドナルド@灯れ松明の火
19
漢字の歴史・由来・意味は古代中国の亀甲文等から祈祷・占いが源となるという白川氏の漢字観を松岡正剛氏が熱く紹介している。成程と感じたところも多数あった。漢字の元を生んだ中国ではこのような研究はしていないようで崩した中国語がまかり通っている。漢字は今や日本の言葉になっていると感じた。2016/05/28
ひよピパパ
18
白川静の人と学問を知る上で道しるべとなる書。白川静といえば漢字学・文字学にばかり目がいきがちだが、実はその原点には同郷の歌人・橘曙覧の『万葉』との結びつきがあって、『万葉集』と『詩経』の関連性(それは「興」(予祝・予占)という発想において共通すると主張される。)を追究する過程で、『詩経』および漢字・金文研究に没頭していくこととなった事情がよくわかった。「巫」の存在と働き、そして「神」との関わりを強く意識した上で、古代社会と文字の持つ意味を解明していくその研究スタイルをよく教えてくれる。2020/05/09