出版社内容情報
著者初の本格自伝的小説・完結編。戦後の激動のなか、炭鉱の町で育ったヒナ子は映画の脚本家を目指して密かに上京をもくろむが……。
村田喜代子[ムラタキヨコ]
著・文・その他
内容説明
中学生ヒナ子は製鉄の街を飛び出し、映画の世界を夢見て上京をもくろむが…。名もなき人々が煩悶しながら戦後の激動を火のように生きる、著者初の本格自伝的小説・完結編!
著者等紹介
村田喜代子[ムラタキヨコ]
1945年、福岡県八幡(北九州市)生まれ。87年「鍋の中」で芥川賞受賞。90年「白い山」で女流文学賞、97年『蟹女』で紫式部文学賞、98年『望潮』で川端康成文学賞、99年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞を受賞。2007年、紫綬褒章受章。10年『故郷のわが家』で野間文芸賞、13年『ゆうじょこう』で読売文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なゆ
67
あのヒナ子がどう成長しただろうかと。そういえばヒナ子も緑もタマエも、戦後はなんとフクザツな家庭で育つ子の多かったことか。素直で元気なヒナ子も、中学生になると口数少なくもの憂げになるのだな。好きなこと見つけたら新聞配達して自分で稼ぐし、その勢いできっと飛び出して行ってしまうのだろう。周りの大人だちもなんだかんだと忙しなく面白く、当時の暮らしぶりが興味深い。ヒナ子みたいな娘、初期の短編でよく読んだかも。きっとみんな、村田さんの分身だ。みんな貧しくて街は雑多で、それでもエネルギーに満ち満ちてた八幡を懐かしもう。2019/06/06
信兵衛
33
3組の夫婦と、妙な繋がりでその娘として暮らす3人の女の子を主な登場人物として描き出した人間模様、家族模様というストーリィ。 そういう時代、そういう家族の有り様が事実としてあった、本作についてはその一言に尽きる、と思います。2018/06/20
kawa
29
村田さんの作品は、表現できない不思議な魅力があり、結果として数多くの作を楽しませてもらっている。こちらは、著者の自伝的小説の下巻・完結編。戦後から昭和30年代前半あたりまでの家族や八幡の人々を描く。さほど劇的な展開があるわけではないのだが、その時代の雰囲気や登場人物に妙なリアル感があるのが魅力。2018/07/25
そうたそ
25
★★★☆☆ 著者の自伝的小説である「八幡炎炎記」の二作目にして完結編。本当に続編出るのかとずっと疑っていたのだが、こんなにあっさり完結編まで出てしまうとは。正直、前作の内容もあまり覚えてはいないのだが。前作もこれほどまでに家族の物語的なテイストだったっけ?と思いつつ読了。2018/07/05
あいくん
16
☆☆☆☆「八幡炎炎記」の続編というか、完結編です。戦後の八幡製鉄所の繁栄を背景にして描かれています。1952年から始まります。このころは朝鮮戦争の最中です。国連軍の主体はアメリカ軍です。アメリカ軍の補給基地は日本です。国内の朝鮮特需景気は特にこの時期の八幡製鉄の発展を支えました。八幡製鉄を舞台にした「この天の虹」という映画が作られました。久我美子と高橋貞二のラブロマンスもありましたが、映画に関心を持つようになったヒナ子は不満です。八幡製鉄所に東京の俳優が来て作りごとの芝居をしただけと言います。 2018/08/07