内容説明
権力がなければ弱肉強食の「魚の道理」が支配しよう―。権力の本質・政治の基本原則から、スパイの利用法・謀略戦の種類・強敵に和平を乞う贈物のあり方までが、見事な喩法に富む箴言詩によって説かれる。マキアヴェリ『君主論』を遙かに凌駕する、インド的戦略思考の古典。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
紀元前に実践的な哲学を実利と戦略の側から捉えようとした『カウリティア実利論』をさらに洗練させたとされる本書は、国家を要素の集合体と捉え、さらに和平、諜報、謀略等36の要素の細部から、君主が行うべき政略を説く。とはいえ、それら実践と利益に関して、法(ダルマ)に従っているかが問われる点が特徴的だ。それゆえ、戦争は最後の手段であり、その要因となる賭博、狩猟、女性、飲酒、財産の侵害、肉体への暴力、言葉の暴力を避けるべきとされる。糧食の輸送やラクダを用いた輸送手段の確保など、兵站やロジスティクスに関する指摘もある。2022/09/28
しっぽ
4
とても面白い。帝王学的な意味が強く、戦争がメインテーマだがかなり詳しく書かれている。勉強になった。2021/06/16
in medio tutissimus ibis.
4
割と雑多な『実利論』から政策論だけを抜き出して多少のアレンジを加えた本。王や臣下の個人的な美質については伝統的宗教の意義を説きつつ、政策においては金と兵力と権謀術数がモノを言うというマキャベリズムの本。狩猟は全くダメだと言いつつどうしてもやるならこうしなさい的な事に結構頁を割いていたのは需要があったからだろうか。訳注が元ネタの『実利論』はまだ分かるとして『パンチャタントラ』その他諸々の本のどこどこを参照とばかりしていて殆ど役立たずではあるのだが、一方で陣形については丁寧な図説をのせていたりして侮れない。2018/07/18