内容説明
癌、そして手術―、鉄槌のようにやってきた死のおびやかしに向きあい、あらためて自らの生を、死を、身体を問う。自然と身体の一体化を模索する、感動の平林たい子文学賞受賞作。
目次
1 再起
2 自然
3 他者
4 自己
5 無常
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
3
体の中に自然がある。いつかは朽ちるこのうつしみ。それでも内なる自然と外なる自然のつながりを感じることができたなら、生の無常は和らげられるのだろうか?2010/05/08
algon
2
著者の結腸癌手術という大患を契機に、自然、自己と他者、身体と精神について思考を深めていく哲学的長編エッセイ。縄文的自然、弥生的自然という感覚も面白かったが、現実、精神は存在せず「身体である精神」が存在するだけ、また身体も存在せず「精神である身体」が存在するだけ、そして身偏に心と書く字をもって「うつしみ」と訓を与えたい…という観念は一つの見識として受け止めた。「比類なき明晰さもそのまま根こそぎ病んでいる」という三島由紀夫評は白眉と。医師、評論、作家と多面な著者の人間を表した誠実なエッセイ。少々難解だったが。2017/09/28
アレカヤシ
0
自分の使う語義を明確にしようと、所々説明がされているのが好ましい。精神・身体という言葉の意味するものをはっきり掴み、それによってよく分らない「自分」を見つけ出そうとしている。よくある、人が死の危機に臨んで開けた(自己=人生)についての考え方、諦念、みたいなのが書かれている。わたしにはとても難しいけど、懐かしい感じ。死に近づいた経験を持つと似たような感じになる人は多いと思うけど、それを言葉であらわすのはやっぱり凄いことじゃないかな。P182~のかなぶんと洗脳の話が焼きついた。 2017/12/25
うろたんし
0
すごかった。今ではすっかり旧知の人となったけど、上田三四二を知ることが出来て本当に良かった。本の中では、最近改めて学んだ縄文、弥生、両時代の日本のこと、それから徒然草、良寛、更には森鴎外。そして、藤原正彦の強く押すところの日本人の長所、惻隠の情。僕の知的好奇心をくすぐる言葉のオンパレードで、それを著者独自の視点から見た、醒めた文章で読んで、僕は酔った。2014/03/19