目次
五十年代?
前衛画家の遺産
厳格なまでの官能、あるいは女性的空間
完璧な宇宙
ヴィスコンティ、失われた光景の再現
美しい映像とゴミ溜
小耳の楽しみ
ロメールのリアリズム
大きな猫が老いをむかえる
川の流れの向こうは、オスカー〔ほか〕
著者等紹介
金井美恵子[カナイミエコ]
小説家。1947年、高崎市生まれ。小説に「岸辺のない海」、「プラトン的恋愛」(泉鏡花文学賞)、「タマや」(女流文学賞)ほか多数
金井久美子[カナイクミコ]
画家。1945年、北京生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
13
〈すくなくともルノワールの映画に出あうことはなかったら、『柔らかい土をふんで、』という小説を書くことはなかったと確信をもって言える。一九八七年、日本未公開だった『のらくら兵』と『牝犬』に出あわなかったら、小説を書きつづけることが出来たとは、とても思えないのだ。〉作家に小説を書かせたもの、小説を書くことの方へと、作家の指を向かわせる、向かわせ続けるもの。ほかでもない金井美恵子に!小説を書かせるもの、書き続けることを運命づけてしまうもの。それらに触れること。それらを語るための言葉とオブジェに触れるということ。2023/07/21
あ げ こ
9
快楽であるもの。魅惑であるもの。金井美恵子の内にあるもの。金井美恵子にとっての幸福であるもの。楽しみであるもの。甘やかで、柔らかで、滑らかで、鋭く、濃く、美しく、綺麗で、繊細で、艶やかで、豊かで、親しくて、快いもの。瞬間であり、情景であり、色彩であり、感覚。飽きる事なく、自らの記憶と混じるほどに、繰り返し、幾度となく、求め、貪り、感じ続ける類の。沢山詰まっている。その細やかさと膨大さ。うっとりとめまい。金井美恵子の言葉によって知り、体感する喜び。立ち上って来るもの達の熱さ、その貴重さと甘美さに、息をのむ。2019/10/02