内容説明
早稲田鶴巻町界隈。「つるや絵端書店」と書かれた紺の暖簾の下がる店先。客は皆な帰ってしまったし、今日はおしまいにしよう、と店番の環が戸を閉めようとすると、店先へ走り込んだ青年がいた。「環さん」と題のついて絵を携えて。綺麗な肖像で有頂天になった彼女の耳に口を寄せ、思い入れのある声で「ねえ環さん」と言った―。画家志望の竹久夢二、23歳の時である。
著者等紹介
梅本育子[ウメモトイクコ]
1930年東京生まれ。昭和女子大附属高校中退。作家・吉田紘二郎の晩年を描いた『時雨のあと』で文筆生活に入り、以後は歴史・時代小説に専念。男と女の関係を淡白な中にも大胆に描く筆致が特色で、特に短編の名手として知られている
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