内容説明
霊岸島北新堀大川端町の裏通りに小さな間口の豆腐屋が一軒。おやじの善助と女房のお孝。近所の人から善助と呼ばれる男の本当の名は、藤枝久三郎、元常陸府中藩二万石松平家で納戸組七十石をはんでいた。禄を離れたのは九年前、二十五の歳であった。それから四年諸国を流浪。五年前、江戸を襲った大火で亭主を失ったお孝を助けたのが縁であった。だが彼を仇と狙う男は間近に迫っていた。
著者等紹介
千野隆司[チノタカシ]
1951年東京生まれ。国学院大学文学部文学科卒業。出版社勤務を経て現在中学校教員。1990年『夜の道行』で、第12回小説推理新人賞を受賞。著書に『かんざし図絵』『二夜の月』など。新進推理作家のための登龍門は近年とみに増えたが、捕物帳に受賞作の栄誉が与えられた事例は、この作家を除けば皆無といわれる
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