内容説明
剣戟が戞然とひびいた。斎藤伝鬼の剛剣と斬月の秘太刀が鉄火を散らして噛み合い、次の瞬間、霞之助の太刀が脆くも折れた。灼けた鉄の匂いが霞之助の鼻孔を打った。同時に斎藤伝鬼の剛剣が唸りをあげて霞之助の頸を断ち切った。ザクロの如き傷口から、鮮血が瀑布の如く噴出し、霞之助はどうと倒れた。乱世を斬った不動明剣の凄絶な秘技。
感想・レビュー
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紫
1
伝奇小説とも剣豪小説ともつかない、何だか奇妙な物語。戦国時代の剣豪・斎藤伝鬼房を主役に据えているのですが、人物描写に難ありで、凄い人物だと持ち上げるほどにどう凄いかがさっぱり伝わってこないというまことに困った主人公。他の登場人物も行動原理がまるでつかめず、感情移入ができるのは伝鬼房に挑んで敗れる桜井霞之助ぐらいか。柳生一族の暗躍などもあるんですが、こちらも物語への関与が迷走気味。著者の他の伝奇物も読んでいれば印象が変わるかもしれないですが、本書だけでは何ともつかみどころがない困った一冊であります。星2つ。2018/07/04