内容説明
系譜的に取り上げる時点については、中小企業基本法、中小企業近代化促進法、その他一連の立法化によって中小企業の近代化政策がおしすすめられた昭和30年代に注目し、昭和30年頃(1955年頃)を起点とし、1985年9月のG5の合意を契機に急激な円高の進行によって、鉄鋼、造船、自動車、工作機械、家電からエレクトロニクス製品分野に至るまで、競争力の低下をもたらし、大企業の生産基盤の弱体化が指摘され、また中小企業の分野では「企業城下町」を形成している地域では中小・零細下請・系列が、その存立条件が失われ、倒産、廃業、休業が続出し、「産業空洞化」が強く意識されはじめた昭和60年代初頭頃(1980年代末頃)までの約35年としてみた。またその期間を便宜上10年単位ぐらいで大まかに区切ってみて、編年史的に、その間にあって特徴的ないくつかの実態調査、研究資料等を取り上げ、それらを通じて現代における東京の中小・零細工業の動向を一つの視座からみてみた。
目次
1章 昭和30年代(1955年~1964年)―中小工業の経営者、労働者に関する意識調査、階層移動実態調査、小零細工業の業種実態分析、中堅企業群の形成発展の事例研究など
2章 昭和40年代(1965年~1974年)―中小零細工業の地域的存在理由をさぐる調査研究、地域的・業種的な存在の実態を明らかにする類型分析など
3章 昭和50年代(1975年~1984年)―小零細工業の類型的経営構造や家内工業の地域的・業種的社会分業の実態動向調査、あるいはまた地域社会の変貌と中小工業の動向など
4章 昭和60年代初頭から平成初頭(1985年~1990年)―宅地化の進展のなかに混在する工業集積地域の小零細工業の実態動向調査、東京23区の産業構造の変動分析など
5章 結び―作業過程で感じたこと