出版社内容情報
第二次世界大戦末期、ゲシュタポの手から逃れ、南仏の田舎町に疎開した時に書いた長編小説。語り得ないものを語ろうとするワットの精神の破綻を複雑な語りの構造を用いて示した特異な作品。
内容説明
語り得ないものを語ろうとする主人公ワットの精神の破綻を、複雑な語りの構造を用いて示した現代文学の奇作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふるい
9
ベケットがレジスタンス運動に関わっていた頃、フランスに潜伏していた時期にひっそりと書かれたもの。意味の追求に病んだワットが見聞きした(あるいはしなかった)出来事の集積をどう読み取ればよいのか。困惑。馬鹿馬鹿しくも高度な文学的遊戯?この作品はもともと出版するつもりはなかったようです。3部作も読んでみたい。2019/12/21
borug
4
訳者あとがきにもあるように所々読み飛ばしながら読んだ、というかまともになんて読んでられない。でも読み終わってみるとおもしろかった。2015/03/12
arekcey
3
これは間違いなくヤベーやつ。 馬鹿正直に一字一句飛ばさずに読み込もうものならどうにかなるんじゃないか2019/04/05
なめこ
3
書くこと、語ることにまつわる不自由さがあまりにもあけすけに語られ、また書かれているところにとてつもない自由さがあり、本作に限らず、ベケットの小説を読んだ者なら誰でも、これ以上何をどうやって書け/語れというのだ、と途方に暮れてしまうことは必定、と断じてさえみたくもなる、このうえなく魅惑的で厄介極まりない小説であった。2015/12/21
ディヴァイン
3
ベケットがではなく言葉が物語を無軌道に奏でていてそのことに「Waht?(ワット)」の連続。ナンセンスで独りよがり、でもベケットを読むのはナンセンスで独りよがりな戯れに付き合うということ。それに本書は良い意味でも悪い意味でも無軌道なナンセンスさが頂点に達していて少々参るところもあるが、これがベケットということを知らしめられる一冊であるということを感じさせられる。言葉を影で操るベケットの仕掛けた戯れに是非、浸ってほしい。2009/10/03