出版社内容情報
退廃と背徳の都パラディス。この地において男女の別にいかなる意味があろうか? 吸血譚、悪魔崇拝、魔女の遍歴。「紅に染められ」「黄の殺意」「青の帝国」の中編3編を収録。
内容説明
退廃と背徳の都パラディス。この地において男女の別に、いかなる意味があろうか?詩人が手に入れたスカラベの指輪の秘密。両性具有の吸血譚「紅に染められ」。昼間は修道院で働き、夜は少年の姿で悪行のかぎりを尽くす娘。悪魔崇拝を描いた「黄の殺意」。謎の死をとげた美貌の役者が魅入られたこの世ならぬ存在とは。「青の帝国」。幻想の都パラディスを舞台にした中編3編収録。
著者等紹介
リー,タニス[リー,タニス] [Lee,Tanith]
1947年ロンドン生まれ。9歳にして創作を始め、1971年に児童向けファンタジーでデビュー。ファンタジー、SFなど多数の著作がある。代表作は英国幻想文学大賞を受賞した『死の王』をふくむ「平たい地球」シリーズなど
浅羽莢子[アサバサヤコ]
東京大学文学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
57
ダークファンタジー。性転換、男装、アンドロギュノス。男と女、互いの性は軽々と超越され、溶け合い混じり合って至高の破滅へと流れ出していく。どの話も退廃と混沌に満ち溢れているが、昼は尼僧夜は男装の盗賊の二重生活を描いた「黄の殺意」が何とも素晴らしい。汚穢が聖へ移り変わる一瞬を描いた描写など、まさにこれがファンタジー。残りの二編も素晴らしいが、こちらは魅入られながらも逃れられないというファム・ファタルを描いたようにも受け止められる。ただしそこでも普通の運命の女とは異なり、互いは溶け合い混ざり合って……。2015/11/16
波璃子
22
読了するのに時間がかかったし読むのに疲れる。それだけこの耽美で退廃的な世界が濃厚なのだろう。聖なるものが邪で、邪なものが聖なるものになるというこの不思議な感覚はパラディスでしか味わえない。「黄の殺意」が良かった。2015/02/20
あ げ こ
10
男であり、女であるもの。その二つの性を超えたもの。醜悪であり、優美であるもの。苦痛であり、喜悦であるもの。性は囲い。それも酷く矮小な。彼等を前にしては。男に、女に、姿形を自在に変え、そのいずれをも悠然と超えて行く彼等を前にしては。それほどまでに魅惑的である彼等の交歓と破滅の数々。変化はすべて唐突に訪れる。心傾けるべき予兆などない。何もかもが不意に、けれど当然のような顔をして訪れる。出迎えた方もまたその訪れを意外に思う事はない。滑らかに超えて行く。わかっていたと。彼等は毅然と果たし、受け入れ、超えて行く。2016/10/20
tobi
7
どの話も男と女の性がめまぐるしく変化。それに追いつけなかったのが「紅に染められ」。「黄の殺意」は主人公の変貌ぶりが残酷であるが、痛快にも感じた。翻訳のことばが美しかったけど、原文はどうなっているのだろう。。。 2016/03/06
warimachi
5
角川ホラー文庫で過去に既読。読み直しても「黄の殺意」のインパクトがすごい。2020/07/03