出版社内容情報
森鴎外訳「即興詩人」に誘われ、著者はイタリアを訪ね歩く。豊穣な歴史、文化、美術、音楽などにも触れた文学紀行エッセイ。
内容説明
「ロオマに往きしことある人はピアツツア、バルベリイニを知りたるべし」、文語による翻訳の精華といわれる鴎外訳「即興詩人」。作中の一文一文に導かれ、著者は作品の舞台であるイタリアを端から訪ね歩く。今も語る風景は単なる観光案内にとどまらず、豊穣なヨーロッパの歴史、文化、美術、音楽の姿を垣間見せる。練達の著者による文学紀行エッセー。第12回JTB紀行文学大賞受賞作。
目次
1 ローマに生れて(バルベリイニ広場;骸骨寺 ほか)
2 吾友ベルナルドオ(コリゼエオ;曠野 ほか)
3 黒い瞳の歌姫(恋の毒;ローマの謝肉祭 ほか)
4 いざ地中海へ(ツスクルム;トルレ、ヂ、トレ、ポンテ ほか)
5 ナポリの即興詩人(サン、カルロ劇場;ソレントへ ほか)
6 流離と再会(チヲリ;ネピ、テルニイ ほか)
著者等紹介
森まゆみ[モリマユミ]
1954年東京都生まれ。84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』創刊。近代建築の保存や上野不忍池保全などにも関わり、NTT全国タウン誌大賞、サントリー地域文化賞を受賞。『「即興詩人」のイタリア』で第12回JTB紀行文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
6
まず初めにアンデルセンのイタリア体験があり、その結果、ローマ生まれのアントニオを主人公とする『即興詩人』が生まれた。それをドイツから帰国した鷗外が軍務の傍ら約10年がかりで翻訳出版したもの。本書は著者がアンデルセンの跡を追いつつ、鷗外の『舞姫』や『雁』、『青年』などの初期作品の創作の方法にまで迫ったもの。アンデルセンよりも鷗外への興味や関心が必要。2012/05/27
Hiro
3
ふと手に取って、夢中になるほではないが興に乗ってついつい読んでしまう、ということの、本書は典型だ。旅行記と作品解説と名高い文学者の伝記がごっちゃになったエッセイだが、苦にならずに読めたのは何より本書が旅行記だからではないか。旅の記録には必ず出会いや事件や発見がありそれらは読者をまず退屈させない。しかも目的地がローマ、ナポリを含む観光地イタリアであればなおさらだ。さらにその上に有名なのにあまりよく読まれない即興詩人である。傑作とは言えない原作と、それを懸命に訳した鷗外との謎めいた関係はやはり興味をそそる。2022/05/31