内容説明
主観的・個人的な感性の問題である“美”にとって、客観的な論理や学問は可能だろうか?美学的営為はそのはじまりから、すでに逆説的事態を宿しているといえよう。低級感覚たる味覚を感性論としての美学に変容させようとする「味覚の不幸」、カントの『判断力批判』に即し崇高と芸術との内在的関係を問う「崇高と芸術」、私たちにとって身近に芸術を体感できる美術館という制度の逆説をめぐる「比較芸術学と美術館的知」など、美学が孕み持つ諸問題を、鋭くスリリングに解き明かす力作論考9篇。
目次
1 味覚の不幸
2 崇高と芸術―カント『判断力批判』に即して
3 芸術の社会学的考察
4 美的距離の現象学
5 記号論としての美学―パースにおけるイコン論の成立と展開
6 直観と表現―ベルクソン美学の構造
7 美学としての構造主義―レヴィ=ストロースの芸術論をめぐって
8 美学と美術批評―グリーンバーグとカント
9 比較芸術学と美術館的知
著者等紹介
谷川渥[タニガワアツシ]
1948年、東京生まれ。東京大学大学院博士課程修了。専攻は美学。現在、国学院大学文学部教授
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感想・レビュー
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たか
5
つい友様が取り上げていたからチェックしましたが、う〜ん、難しい…2019/01/03
ラウリスタ~
4
バイト中暇で仕方ないときに、転がってるのを手に取った本。谷川さんの本はちゃんと読まないといけないとは思うんだけど、やっぱ美学者の言ってることは難しい。カントの「形式」と「質量」の二元論に始まる美学の議論、ユイスマンスらの質量的美学。美学ってことばを最近まで勘違いしていたんだけれども、日本語でいう美学っていうのは、エステチックとかで表されることの一部のみをいうみたいで、審美眼とは明瞭に区別されているようだ。そんな美学とは、なにかってのを学べる。かなり難しい書き方してるけど。2013/08/10
真塚なつき(マンガ以外)
1
偶々目に留まって借りたんだけど、美学専攻の友人曰く「近代美学論史を一通りやってからの方がいいと思うよ」の由。まあ確かに。基礎的理解の足らないために追い付けないところが所々あった。それぞれがそれぞれの理論ゆえに抱える(あるいは美学であるがゆえに背負う)「逆説」、自らの論のためにその論拠を否定し去ってしまったり、批判するために当の理論を用いるなどの事態を考察、指摘していく。パース、ベルクソンのあたりは(追い付かないとはいえ)結構面白かった。2011/05/09
hsm
0
「? 味覚の不幸」「? 崇高と芸術」のみ読了。2010/01/02