内容説明
浅草は奥山の生人形、西洋油画を並べた油絵茶屋、パノラマ館での戦争体験、掛け軸になった写真…19世紀日本のエロ、グロ、ナンセンス。細工師の手になる奇々怪々な造形表現のかずかずは、市井の人びとはもちろん、外国人をも驚かせ魅了したが、それにもかかわらず、西洋文明に倣えの近代化が押し進められる渦中で排除され、やがて歴史に埋もれてしまう。美術という基準からはずれたアウトローを掘り出し、幕末・明治の驚くべき想像力を検証する、転換期の日本美術への新たな視座。図版多数。
目次
乍憚口上
石像楽圃―夫婦か知らねど匹付合
手長足長―活ける人に向ふが如し
胎内十月―色事は何処の国でも変りやせぬ
万国一覧―洋行せずして異国を巡る奇術
油絵茶屋―みるハ法楽みらるゝも衆生済度
パノラマ―人造ニナリテ天設ヲ欺ク奇奇怪怪
写真油絵―写真ニシテ油絵油絵ニシテ写真
甲胄哀泣―油絵ハ能く数百年の久しきを保つ者なり
写真掛軸―之を眺むるに風韻雅致を極め
仕舞口上
穿胸国のひとびと―文庫版のためのあとがきにかえて